月間人事労務だより~2024年1月号~

最新・行政の動き

応援手当支給へ助成 育休取得時で最大125万円 厚労省

厚生労働省は、育児休業取得者の業務を代替する労働者に“応援手当”を支給する中小企業への助成を拡充しました。両立支援等助成金に新コースを追加する雇用保険法施行規則の改正省令を公布しています。施行は2024年1月1日で、育休中に業務を代替する労働者に手当を支給した場合、育休取得者1人につき最大125万円を支給します。

追加するのは「育休中等業務代替支援コース」です。同コースでは、育休や育児短時間勤務中の業務体制整備のため、業務を代替する労働者への応援手当(業務代替手当)の支給や、代替要員の新規雇用(派遣含む)を実施した中小企業を支援します。

育休中の手当支給に対しては、制度利用者1人当たり、業務体制整備の経費(原則5万円)のほか、手当額の4分の3(最大120万円)を助成します。手当への助成では、1カ月当たり上限10万円で最長12カ月支援します。

時短勤務中に手当を支払う場合は、業務体制整備経費が定額2万円、手当への助成が最大108万円(上限月3万円、子が3歳になるまで)。育休取得者や時短勤務利用者が有期雇用の場合、10万円を加算します。

ニュース

新制度「育成就労」創設へ 技能実習を廃止し 有識者会議・最終報告

外国人技能実習制度と特定技能制度の見直しの検討を進めていた政府の有識者会議は11月30日、最終報告書をまとめ、小泉龍司法務大臣に提出しました。

技能実習について最終報告書は、労働力の需給調整の手段として利用してはならないという基本理念を掲げている一方、実際には実習生が国内企業の貴重な労働力として受け止められてきたと指摘。技能実習制度を廃止し、人材確保と育成を目的とする新たな制度「育成就労」を創設するよう提言しています。

新制度での受入れ分野は特定技能の分野に合わせ、3年間の就労を通じて特定技能1号の水準の人材を育成します。

技能実習では原則的に認めていなかった他社への転職については、同一企業で1年を超えて就労するなどの要件を満たした場合に認めます。転職の期間要件に関しては、必要な経過措置を検討するよう政府に求めました。

「推薦なし」理由に昇格差別  役職との差額支払い命令 都労委

東京都労働委員会は、都内の運輸業者が所属長の推薦がないことを理由に組合員2人を未だに昇格させていないのは、組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たると認定しました。平成30年11月末付けで2人を指導員以上の職位に昇格したものとして取り扱い、現在までの賃金額と指導員以上の職位ならば支払われるべき賃金額との差額を支払うよう命じました。

合同労組に加入している組合員2人はトレーラーの運転者で、入社以来20年以上にわたって役職者に昇格することなく、最低位の職位のままでした。会社は組合との団体交渉で、昇格は所属長などからの推薦に基づいて実施しているため、推薦がないと昇格できないと回答していました。

都労委は、昇格に関する手続きを明確に定めた社内規程はなかったと認定しました。全運転者198人のうち、役職者は59人と約3割を占めていますが、推薦によって昇格したのは7人だけでした。一方で、組合員らの所属部署では、勤続18年以上の従業員のなかで、役職者になっていないのは両名のみとなっています。

組合員らに勤務成績が低いなどの役職者に不適任な事実はなく、非組合員との間に不自然な差異が生じていると疑わざるを得ないとしています。推薦という形式的な部分にかこつけて、昇格を回避していたと判断しました。

企業人事に意見聴取   子育て条例の制定めざし 新潟県

新潟県は、社会全体で子どもを支えていく基本方針を示す条例の制定に向けて、当事者である小中学生や、県内企業の人事・総務担当者などから意見聴取を行いました。条例の骨子案では、育児休業の取得推進など、事業者が行う育児と仕事の両立支援の取組みを支援する方向性を示しています。

企業に対する意見聴取は、両立支援に積極的な中小企業2社の人事担当者各2人と、男性育休取得者2人の計6人に実施しました。業種は、テレワークが導入しにくいなどの事情を抱えた製造業に絞っています。

企業からは「育児休暇などの制度を整備するだけではなく、職場内で活用できる雰囲気づくりが重要」、「男性育休は周囲で取っている男性がいれば、自分も取れる雰囲気が醸成される」などの意見が挙がり、条例での意識啓発に期待を示しました。

同県は2024年2月定例会への条例案提出を予定しています。企業に対する具体的な支援策は来年度、条例に基づく推進計画と併せて検討していくとしました。計画策定に当たっても、企業からの意見聴取を予定しています。

調査

70代も「まだ働きたい」 第18回 中高年者縦断調査(厚労省)

調査は、平成17年10月末に50~59歳だった同一の男女に対して継続的に行っています。調査対象者の現在の年齢は67~76歳です。

第1回調査で「仕事をしている」とした81.8%のうち、44.4%が17年後の今回調査でも働いています。男女別でみると、男性は95.7%のうち48.7%、女性は70.5%のうち39.6%となっています。

第1回で「正規の職員・従業員」だった男性(61.8%)は、41.7%が働いていますが、現在の仕事は「パート・アルバイト」が15.8%と最も高くなっています。正規雇用だった女性(19.6%)の場合も同様にパート・アルバイトが最も多く、19.1%となっています。

今回調査で「仕事あり」とした者のうち、68~69歳になっても仕事をしたい67~68歳は80.3%でした。70~74歳になっても働きたい67~73歳は、59.1%となっています。

実務に役立つQ&A

派遣社員の相談対応は ハラスメント防ぎたい

Q.派遣労働者を以前受け入れた際に、ハラスメント被害を受けたという事案が発生したため、再発防止を徹底したいと考えています。あらかじめ自社の相談窓口を伝えておくことのほかに、何か注意点はあるでしょうか。

A.派遣先における苦情処理対応は、派遣元との連携がポイントです。派遣法40条1項で、苦情の内容を派遣元事業主に通知するとともに、派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならないとしています。

苦情には、セクハラ、妊娠出産等に関するハラスメント、育休等に関するハラスメント、パワハラ、障害者である派遣労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情に関するもの等を含みます(派遣先指針、平11・11・18労働省告示138号、令2・10・9厚労省告示346号)。

派遣先は、派遣契約において苦情申出を受ける者等を定めるとともに、派遣受入れに際し説明する必要があります。さらに、派遣先管理台帳において、苦情処理状況を記載するととともに、その内容を派遣元へ通知するよう求めています。

身近な労働法の解説 ―労働条件の明示②―

今回は、労基法15条(労働条件の明示)に関して、明示すべき労働条件について解説します。

1.労働条件の明示事項(労基法15条1項、労基則5条)

(1)書面で明示すべき労働条件

  • 労働契約の期間(期間の定めの有無、定めがある場合はその期間)
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準(満了後に更新する場合があるもの)
  • 就業の場所・従事する業務の内容
  • 労働時間に関する事項(始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩、休日、休暇など)
  • 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

(2)その他明示すべき労働条件

  • 昇給に関する事項
  • 定めた場合に明示すべき事項(退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、労働者に負担させる食費・作業用品、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職などに関する事項)

※職安法5条の3、職安則4条の2:「試用期間」、「加入保険の適用」、「募集者の氏名または名称」、「派遣労働者として雇用する場合はその旨」、「受動喫煙防止措置の状況」を募集や求人申込の際に、書面で明示する必要があります。

※パート・有期雇用労働法6条、則2条:「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口」を文書の交付などにより、パート・有期雇用労働者に明示する必要があります。

2.明示の内容

上記1(1)②は、有期契約労働者が「契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要」します(平24・10・26 基発1026第2号)。

同④は、「勤務の種類ごとの始業および終業の時刻、休日等に関する考え方を示した上、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで足り」ます(平11・1・29 基発45号)。

同⑤は、「賃金に関する事項が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、労働者の採用時に交付される辞令等であって、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えない」としています(昭51・9・28 基発690号)。

3.令和6年(2024年)4月の改正点

労働者の募集時等や、労働契約の締結・更新のタイミングにおける労働条件明示事項が追加されます。

(1)全ての労働者に対する明示事項

上記1(1)③就業の場所・業務の内容については、「雇い入れ直後」に加え、これらの「変更の範囲(将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲)」を明示します。

(2)有期契約労働者に対する明示事項

  • 更新上限の明示(更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示)
  • 無期転換申込機会の明示(無期転換権が発生する更新のタイミングごとに明示)
  • 無期転換後の労働条件の明示(同上)

助成金情報

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

2023年10月からキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」が始まりました。新たに社会保険に適用されることで生じる保険料負担が労働者の手取り収入の減少につながらないよう、手当等により労働者の収入を増加させる取り組みを行った事業主に、労働者1人につき最大50万円を助成します。

手当等支給メニューと労働時間延長メニューがあり、両メニューの併用も可能です(併用メニュー)。

【社会保険適用促進手当】

・短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するに当たり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するものです。

・給与・賞与とは別に支給され、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないことができます(最大2年間)。

 

【手当等支給メニュー】

表1

要件 1人当たり助成額
①賃金の15%以上を追加支給(社会保険適用促進手当) 1年目 20万円
②賃金の15%以上を追加支給(社会保険適用促進手当) 2年目 20万円
③賃金(基本給)の18%以上を増額 3年目 10万円

 

【労働時間延長メニュー】

表2

週所定労働時間の延長 賃金の増額 1人当たりの助成額
①4時間以上 6カ月で30万円
②3時間以上4時間未満 5%以上
③2時間以上3時間未満 10%以上
④1時間以上2時間未満 15%以上

助成額は中小企業の場合(大企業は4分の3の額)

 

【併用メニュー】

表3

適用 要件 助成額
1年目 賃金の15%以上分を労働者に追加支給(社会保険適用促進手当)すること 6カ月ごとに10万円×2回
2年目 表2の①から④のいずれかで労働者の収入を恒常的に増加させること 6カ月で30万円

助成額は中小企業の場合(大企業は4分の3の額)

 

※助成額・詳細な要件および申請方法等は 厚生労働省HP等をご参照ください。

今月のチェックポイント

二以上勤務被保険者の届出について

今回は二以上勤務被保険者について解説します。

 

被保険者が同時に複数(2カ所以上)の適用事業所に使用されることとなった場合、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定し、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出します。

 

それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額が決定されます。決定された標準報酬月額による保険料額をそれぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分し支払うことになります。それぞれの事業所での報酬月額および保険料については、日本年金機構(管轄の事務センター)から通知されます。

 

ただし、被保険者が国・地方公共団体等(以下「国等」という)の適用事業所に勤務する短時間勤務職員であり、共済組合制度(短期給付)の適用を受ける場合、国等の事業所を選択することになります(厚生年金基金の加入員となる場合を除く)。

共済組合に加入している事業所での勤務日数や労働時間が短時間の場合、共済組合制度を優先し、他の事業所は被保険者資格喪失の手続きが必要な場合があります。

 

令和4年10月から共済組合制度が適用拡大されていることから、新たに被保険者となる場合、健康保険に加入する事業所で共済組合の被保険者になっているかの確認が必要です。健康保険に加入する事業所で被保険者となっていない場合は、健康保険に加入する事業所から資格取得届とあわせて、健康保険の保険料徴収および保険給付を行わないための「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」の提出も必要となります。

既に健康保険に加入する事業所で被保険者であった場合には、資格喪失届を提出します。

 

【選択が必要になる場合】

1.保険者の一方が健康保険組合である場合

2.保険者がいずれも健康保険組合または共済組合である場合

3.保険者の一方が全国健康保険協会、他方が健康保険組合である場合

4.保険者の一方が共済組合、他方が全国健康保険協会または健康保険組合である場合(共済組合を選択する必要があります。ただし、厚生年金基金の加入員となる場合を除く)

5.保険者がいずれも全国健康保険協会で、二以上の事業所を管轄する年金事務所が異なる場合(年金事務所を選択します)

6.保険者がいずれも全国健康保険協会で、二以上の事業所を管轄する年金事務所が同一の場合(事業所を選択します)

短期給付(医療保険)の適用関係

短期給付(医療保険)の適用関係

加入する共済制度により上記の表の通りです。

 

年金制度に関しては、私学共済が適用となる場合を除き、日本年金機構の厚生年金保険が適用となり「二以上事業所勤務」として、事業主が手続きを行います。

今月の業務スケジュール

今月のスケジュール表202401

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