最新・行政の動き
女性活躍推進 ハラスメント対応強化へ 有識者検討会で議論 厚労省
厚生労働省は「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」を設置しました。
企業に対して行動計画の策定などを求める女性活躍推進法は、10年間の時限立法として平成28年度から施行されており、令和8年3月末で失効することになっています。令和元年に成立した女性活躍推進法等改正法では、行動計画の策定義務および女性活躍に関する情報公表義務の対象を、常用労働者101人以上企業にまで拡大し、事業主におけるパワーハラスメント防止措置義務も新設。さらに4年7月には、省令改正によって、301人以上企業に対して男女の賃金の差異を公表するよう義務付けるなど、女性の活躍に向けて規定を充実させてきました。
その一方で、男女の賃金差異は依然として大きく、女性の管理職割合も国際的にみると低い状態です。都道府県労働局に寄せられるハラスメントに関する相談件数も高止まりしています。セクシュアルハラスメント・パワハラのほか、妊娠・出産に関するハラスメントなどの相談件数は令和4年度1年間で13万件に達します。厚労省の調査によると、顧客などからの著しい迷惑行為(カスハラ)を受けたことがある労働者も少なくありません。
このため、同検討会において、女性活躍推進に関する現状・課題を改めて整理し、めざすべき方向性・対応について議論します。2月29日の初会合では、生理や更年期障害など女性特有の健康問題への対応や、カスハラを含めたハラスメント対策の強化を検討課題とする声が多く挙がりました。
ニュース
本社一括届出を拡大 1カ月変形時間制など 厚労省
厚生労働省は、事業場ごとの届出を求めている1カ月単位の変形労働時間制に関する労使協定などについて、電子申請に限り、本社機能を持つ事業場が一括して届け出ることを認める通達を、都道府県労働局長に向けて発出しました。2月23日から適用しています。
従来、本社一括届出の対象は、就業規則のほか、時間外・休日労働協定、1年単位の変形労働時間制に関する協定に限られていました。
新たに電子申請による本社一括届出が認められるのは、①1カ月単位の変形労働時間制に関する協定、②1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定、③事業場外労働のみなし労働時間制に関する協定、④専門業務型裁量労働制に関する協定、⑤企画業務型裁量労働制に関する決議、⑥企画業務型裁量労働制に関する定期報告――の6つの手続きです。
いずれの手続きも、本社の協定・決議・報告と、本社以外の事業場の協定などの「内容が同一」でなければならないとしました。
たとえば、1カ月単位の変形労働時間制の場合は、業務の種類、変形期間(起算日)、変形期間中の各日および各週の労働時間・所定休日などが、一括届出を行う事業場間で同一である必要があるとしました。
複数人訪問へ支援金 在宅介護のカスハラ防止 福岡県
福岡県は来年度、在宅医療・看護の現場における利用者や家族からの暴力・ハラスメント対策として、訪問同行者を派遣する際の費用支援や相談窓口の設置などを計画しています。昨年3~4月に初めて行った実態調査では、在宅医療・介護従事者の38.5%が「何らかの暴力・ハラスメントを受けたことがある」と回答していました。
従事者に対する安全確保策として、管理者・従事者双方に向けたハラスメント対策研修の実施、利用者宅にて身の危険を感じた際、外部にSOSを発信できる機器の導入支援などを進めていきます。暴力・ハラスメントのおそれがある利用者宅を複数人で訪問できるようにするために、同行者費用の支援金制度も新設する予定です。介護・医療保険の「複数名加算」は利用者の同意を得る必要があり、実際にはハラスメント対策として利用されていない実態を解消したいとしています。
同県高齢者地域包括ケア推進課は「令和4年1月に埼玉県ふじみ野市で訪問診療医が利用者の家族に射殺された事件を受け、対策の必要性を感じていた」(担当者)と話しています。ハラスメントは離職の一因にもなっているとして、本格的な対策に乗り出す方針です。
配線器具火災 5年で約2倍に 在宅勤務背景か
製品事故に関する情報収集・調査などを行っている(独)製品評価技術基盤機構(NITE)は、テーブルタップや延長コードなど配線器具の火災事故が5年で倍増しているとして、注意を呼び掛けています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの普及により、配線器具の使用が増えたことが背景にあると推定しています。
昨年、NITEへ報告があった配線器具の火災事故は28件でした。コロナ流行前の2019年は15件でしたが、21年以降は毎年30件前後で推移しています。
NITEでは事故防止のため、配線の設置状況の見直しを呼び掛けています。コードが足や家具に引っ掛かることで電源プラグが変形すると、異常発熱につながる危険性があると指摘。併せて、プラグ周辺の小まめな掃除も促しました。水分が付着すると発火の恐れもあるため、掃除の際は乾拭きで汚れを取り除くよう注意しています。
代替員配置に100万円 保育士の育休後離職防ぐ 山形県
山形県は令和6年度から、保育士が育児休業を取得しやすく、長く働き続けられる職場環境を整備するため、新事業を開始します。民間の保育所において、育休の取得を予定している保育士がいる場合に、あらかじめ育休代替保育士を配置したり、復帰後も配置したりするための経費を最大100万円まで補助します。
対象となるのは、育休を取得する保育士と、代替保育士が同時に配置されている期間に生じた経費。代替保育士に支払った賃金など、人件費を想定しています。産前産後休業より前の期間や、育休復帰後の期間を対象とするのは全国初。年度当初から補助を受けられるようにすることで、代替保育士を獲得しやすくする狙い。
補助上限額は100万円としました。県と、保育所所在の市町村で2分の1ずつ負担します。事業計画策定に当たり県内の保育園にヒアリングを実施し、50人以上の利用を見込んでいます。
同県子ども成育支援課によると、育休を取得した後、そのまま離職してしまう保育士がめだつといいます。「代替保育士がいることで、復帰しやすい職場環境を整えられる。キャリアを途切れさせないことで、保育士の賃金向上にもつなげられる」と話しています。
送検
100時間残業の割賃支払わず 鳥取労基署・送検
鳥取労働基準監督署は、労働者2人にそれぞれ約100時間の時間外労働をさせていたにもかかわらず、約20~30時間分の割増賃金しか支払わなかったとして、鳥取市内の小売業者と同社代表取締役を、労働基準法第37条(時間外労働等の割増賃金)および同法第108条(賃金台帳)違反の疑いで鳥取地検に書類送検しました。
立件対象の期間は、令和5年10~11月。労働者にタイムカードを打刻させた後も働かせている実態にあったことが発覚しています。事実に基づかない時間外労働時間数や割増賃金額を賃金台帳に記入していたとみられます。
同労基署による臨検監督の際、不正に打刻されたタイムカードや虚偽記載した賃金台帳を提出したとして、同法第101条(労働基準監督官の権限)違反の疑いでも立件しています。
監督指導動向
災害時の例外周知を 地震・雪害対応増加受け 福井労基署・建設業向け要請
福井労働基準監督署は、福井県建設業協会に対し、能登半島地震の復旧工事や雪害対応に関連して、災害時に労働時間の延長が可能となる労働基準法第33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)の周知を要請しました。
同条では、災害復旧工事などを行う場合、労基署長の許可を得ることにより、36協定の延長時間とは別に、時間外・休日労働を行わせることができると定めています。同労基署では今年に入ってから、同条における許可の対象となる業務の範囲や、提出物の種類に関する問合せが増加していました。「4月からの建設業の上限規制適用と、積雪・能登半島地震対応が重なったことが理由と思われる」(同労基署担当者)。
要請に当たっては、福井労働局のホームページ内に同条の要点をまとめた専用サイトを作成し、案内しています。たとえば許可基準について、降雪で交通への重大な影響が予測される状況では、凍結防止剤の散布など、予防的に対応するための業務も含まれるとしました。
上限規制適用に伴い、新様式による36協定の届出が必要となる事業者も多いことから、新様式の周知も要請しています。
調査
配偶者収入も実質減に 家計調査報告(2023年平均)
総務省は家計調査の2023年平均結果を公表しました。世帯主が会社などに勤めている「勤労者世帯」について、2人以上の世帯をみると、2023年の実収入(現金収入)平均は1世帯当たり60万8182円でした。前年比に関しては、名目では1.5%減少、実質では5.1%減少となりました。3年連続で実質減少が続いています。
実収入のうち、配偶者収入の平均は9万7670円でした。名目では0.3%増加していますが、実質では3.4%の減少となっています。実質減少したのは、6年ぶりとなりました。世帯主の収入は44万1862円で、名目では2.0%減少、実質では5.6%減少しました。実質減少となるのは2年連続。勤労者世帯のうち総世帯の実収入平均は、1世帯当たり52万2334円でした。名目2.4%の減少、実質6.0%の減少となりました。
実務に役立つQ&A
ドナー休暇に給付? 労務不能で傷病手当金
当社でドナー休暇の導入を検討していて、有給とする案が出ています。検査後の入院期間中等について、業務外で労務不能であれば、傷病手当金の受給も選択肢としてあり得るのでしょうか。
健康保険は、業務災害以外の傷病等に関して保険給付を行います(法1条)。傷病手当金(法99条)は、療養のため労務に服することができないときは、その4日目以降、支給され得るものです。
保険給付が制限される場合もあります。被保険者が故意に給付事由を生じさせたとき等です(法116条)。自ら身体を傷付けたとき等は、自己の行為に対して認識能力がない場合を除き、給付は受けられないとした解釈がありますが(健康保険法の解釈と運用)、ドナー登録をして骨髄等を提供した場合は給付制限の対象にはならないと解されています(協会けんぽ東京支部)。なお、入院自体は4日程度で済むこともあるようです。その他、入院に要した日数等に地方自治体等から助成があることもあります。
「骨髄ドナー休暇」の企業事例は、厚生労働省「特別休暇制度導入事例集2022」を参考にしてみてください。
身近な労働法の解説 ―労働契約の内容の変更―
労契法8条は、労働者と使用者の合意により労働条件を変更することができる旨を規定しています。今回は、労働契約の内容の変更について解説します。
1.労契法8条
「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定しています。
当事者の合意により契約が変更されることは、契約の一般原則です。この原則は、労働契約についても当てはまるものであって、本条は、この労働契約の変更についての基本原則である「合意の原則」を確認したものです。
2.条文の解説
(1)本条は、「労働者及び使用者」が「合意」するという要件を満たした場合に、「労働契約の内容である労働条件」が「変更」されるという法的効果が生じることを規定したものです。
(2)「合意により」と規定されているとおり、労働契約の内容である労働条件は、労働契約の締結当事者である労働者および使用者の合意のみにより変更されるものです。したがって、労働契約の変更の要件としては、変更内容について書面を交付することまでは求められないものです(令5・10・12基発1012第2号参照)。
(3)「労働契約の内容である労働条件」には、労働者および使用者の合意により労働契約の内容となっていた労働条件のほか、労契法7条本文により就業規則で定める労働条件によるものとされた労働契約の内容である労働条件、法10条本文により就業規則の変更により変更された労働契約の内容である労働条件および法12条により就業規則で定める基準によることとされた労働条件が含まれるものであり、労働契約の内容である労働条件はすべて含まれるものです。
3.就業規則による労働契約の内容の変更(労契法9条)
労契法9条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない」としています。
就業規則によって労働条件を統一的に設定し、労働条件の変更も就業規則の変更によることが広く行われている実情においては、就業規則の変更により自由に労働条件を変更することができるとの使用者の誤解を生じることがあります。
このため、法9条において、法8条の「合意の原則」を就業規則の変更による労働条件の変更の場面に当てはめ、使用者は就業規則の変更によって一方的に労働契約の内容である労働条件を労働者の不利益に変更することはできないことを確認的に規定しています。
なお、法9条但し書きで例外を示しています。「次条」(法10条)では、「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たことおよび「就業規則の変更が(中略)合理的なものである」ことという要件を満たした場合に、法8条の「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることを規定しています。
今月の実務チェックポイント
育児休業の延長について
今回は育児休業期間の延長について確認します。
育児休業取得期間
原則: 子の1歳の誕生日を迎える前日までの間
(女性は産後8週間を経過した日から取得可能)
延長:1歳6カ月まで(最長2歳まで)
子が1歳の誕生日の前日(延長している場合は1歳6カ月または2歳の誕生日の前日まで)に当該従業員またはその配偶者が育児休業中であり、以下①と②のいずれかに該当すること
① 保育所等への入所を希望しているが入所できない(入所保留通知・市町村が発行した保育が行われないことの証明書が必要)
保育所等とは、児童福祉法に規定する保育所等をいい、いわゆる「無認可保育施設」は含まれません。
② 常態として子どもを育てる予定だった配偶者が、死亡やけが・病気、離婚等によって育児をすることが難しくなった
子どもが1歳に達する日または1歳6カ月に達する日の翌日について、保育園入園の申し込みを行っていない場合など復職の意思がない場合は、雇用保険育児休業給付金の延長手続が行えず、支給されなくなる場合があります。保育園入所の申し込み時期についてはお住いの市町村へご確認下さい。
子どもが1歳6カ月になるまで育児休業を延長する場合は、原則として1歳の誕生日の2週間前までに事業主に申し出ること、書面については任意の書式で良いことになっています(申し出るべき事項は育介則7条1項に規定があります)。
従業員から延長の申し出があった場合、従業員に問題があり、申請に必要な書類が揃わない場合などの正当な理由なく拒むことはできません。但し、人材確保や経営の観点から、保育園に入所できた場合に、すぐに復職する意向があるかなどの確認を行うことは差し支えないとされています。
過度な追及や強い口調での確認はハラスメントと捉えられるので避けたほうが良いでしょう。
延長申請の時期
以下の①または②の育児休業給付金の支給申請時に、支給申請書と入所保留通知や事業主への申し出書面等の確認書類により行います。
① 延長する期間の直前の支給対象期間の支給申請時。但し1歳到達日(以下、誕生日の前日)または1歳6カ月到達日以降の申請時に限る。
② 1歳または1歳6カ月到達日を含む延長後の支給対象期間の支給申請時。
※延長手続きをせずに支給終了年月日まで給付を受けると延長できなくなりますのでご注意ください。
また、社会保険も保険料免除のため、延長手続きが必要です。
助成金情報
両立支援助成金(育児休業等支援コース)
「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、育児休業を取得した労働者が生じた中小企業事業主に支給します。
A.育休取得時
「育休復帰支援プラン」により育児休業の取得、職場復帰を支援する措置を実施する旨を、就業規則等で明文化し、あらかじめ労働者に周知している。 |
労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で育児の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、「育休復帰支援プラン」を作成する。 |
「育休復帰支援プラン」に基づき、対象労働者の育児休業(産前休業から引き続き産後休業及び育児休業をする場合は、産前休業)の開始日の前日までにプランに基づいて業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に、連続3カ月以上の育児休業(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合は、産後休業を含んで3カ月以上)を取得させること。 |
B.職場復帰時
対象労働者の休業中に育休復帰支援プランに基づく措置を実施し、職務や業務の情報・資料の提供を実施すること。 |
育休取得時にかかる同一の対象労働者に対し、育児休業終了前にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること。 |
対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険の被保険者として6カ月以上継続雇用していること。 |
支給額 | ||
A | 休業取得時 | 30万円 |
B | 職場復帰時 | 30万円 |
C.職場復帰後支援
育休から復帰後、仕事と育児の両立が特に困難な時期にある労働者のため、以下の制度導入などの支援に取り組み、利用者が出た中小事業主に支給
育児・介護休業法を上回る「A:子の看護休暇制度(有給、時間単位)」または「B:保育サービス費用補助制度」を導入している。 |
対象労働者が1カ月以上の育児休業(産後休業を含む)から復帰した後6カ月以内において、導入した制度の一定の利用実績(A:子の看護休暇制度は10時間以上(有給)の取得またはB:保育サービス費用補助制度は3万円以上の補助)がある。 |
支給額 | |
制度導入時 | 30万円 |
制度利用時 | A:子の看護休暇制度1,000円×時間
B:保育サービス費用補助制度 実費の2/3 |
【育児休業等に関する情報公表加算】
自社の育児休業の取得状況(男性の育児休業等の取得率、女性の育児休業等の取得率、男女別の育児休業の平均取得日数)を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合に支給額を加算
支給額:2万円
①※ 制度の詳細は厚生労働省HPをご参照ください。
今月の業務スケジュール
労務・経理 | 慣例・ 行事 |
●給与支払報告に係る給与所得者異動届出書の提出 |
●ゴールデンウイーク休暇中の社内体制確立・対外広報 |