月間人事労務だより~2025年1月号~

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最新・行政の動き

意見聴取は施行前に 柔軟な働き方実現措置 育介法Q&A

生労働省は、2025年4月と10月の2段階で施行する改正育児介護休業法に関するQ&Aをまとめました。3歳~小学校就学前の子を養育する労働者に対する柔軟な働き方を実現するための措置について、導入要件となる過半数労働組合などへの意見聴取は施行日である2025年10月1日よりも前に行う必要があるとしました。

改正法では同措置として、始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務制度などから2つ以上を選択して講じるよう事業主に義務付けました。選択時には、過半数組合または過半数代表者から意見を聴取しなければなりません。さらに、3歳未満の子を養育する労働者への個別周知および利用意向の確認も義務付けています。

Q&Aでは、施行日の2025年10月1日時点で措置を講じることができるよう、過半数組合などの意見聴取はあらかじめ行っておくべきとしています。

労働者への個別周知・意向確認については、施行日前に実施する義務はないと明記しました。ただし、施行前に行っておくのが望ましいとしました。

事業主が措置を用意していても、労働者の職種などから利用できないことがあらかじめ想定される場合は、措置義務を果たしたことにならないと指摘しています。

ニュース

工期設定で協力依頼 働き方改革へ発注側に 厚労省・国交省

厚生労働省と国土交通省は、民間建設工事の発注事業者を会員に持つ主要経済団体に対し、建設業の働き方改革の実現に向けた取組みに関する協力要請を行いました。工期設定に当たり、週休2日を確保するほか、受注者からの見積りに基づき、受注者・下請が時間外労働の上限規制を遵守できる内容となるよう、会員企業の協力を求めています。

上限規制遵守の観点からは、猛暑日、降雨・降雪日、河川の出水期などの自然的要因における不稼働によって、作業が他の期間に集中する可能性があることへの配慮を要請。技能者や重機オペレーターが現場へ移動する時間が労働時間に該当し得る点についても注意を促しました。また、工事の前工程で工程遅延が発生するなどして受注者から工期について協議の申出があった場合には、適切に協議し、状況に応じて工期延長など必要な契約変更を実施するよう訴えています。

転倒災害 死傷病報告で要因分析へ 発生状況の詳述促す 福岡労働局

福岡労働局は、転倒災害防止に向け、要因の詳細な分析に乗り出します。

2025年1月1日の受付分から、労働者死傷病報告は電子申請が義務付けられます(経過措置あり)。報告事項のうち、①どのような場所で、②どのような作業をしているときに、③どのような物(起因物)または環境に、④どのような不安全なまたは有害な状態があって、⑤どのような災害が発生したか、を記載する「災害発生状況および原因」の欄については、それぞれの項目ごとに、記述式での入力が求められます。

同労働局では、転倒災害の報告に当たり、「③起因物」や「⑤どのような災害が発生したか」の詳細な記入を呼び掛けます。具体的には、転倒の発生した要因が「滑り」「つまずき」「踏み外し」「もつれ」などのいずれに当たるか、記入を求めます。たとえば何もないところで転んだ場合は、「自分の足がもつれた」などと記載してもらうことを想定しています。

管内の第三次産業は転倒災害が増加傾向にあり、2024年10月末までに前年同期比2割増となる888件発生しました。とくに本社や支店で事務職が被災するケースがめだっています。1月以降は、電子申請のデータを活用して転倒の要因分析を行い、効果的な対策を検討します。直近では、業種別の訪問指導に力を入れる方針です。労働基準監督署ごとに災害が多発している業種を絞り込み、重点的に指導していきます。

“しない配慮”呼掛け 時間外削減へ県民に周知 香川・公労使

香川労働局は、県内の公労使30団体とともに、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されたドライバー、医師、建設業の従業員の労働時間を削減するため、県民に過剰なサービスを求めない配慮を呼び掛ける取組みを始めました。「3つのしない配慮」のキャッチコピーを掲げ、仕事を「妨げない」「増やさない」「時間外にさせない」ことを求めるチラシを共同で作成し、協力を求めています。

運送業への配慮として、再配達を繰り返さずに済むよう、宅配ボックスや置き配の利用を勧めました。建設業では、近隣住民向けの工事説明会について、夜間や土日など勤務時間外での開催を求めないよう依頼しています。

チラシは、連合香川や香川県経営者協会、県内の業界団体など、作成に協力した30団体が広報誌やホームページなどで、展開していきます。同労働局監督課は、「県内の各団体が一丸となって取り組むことで、労働時間の削減につなげていきたい」と話しています。

「交際相手の近くに」も 希望転勤制を拡充 トラスコ中山

工場用工具卸売業の トラスコ中山㈱(東京都港区)は、従業員に対して交際相手の居住地近隣への転勤を認める「ひなどり転勤制度」を新設しました。2005年から配偶者の転勤や結婚・介護などに伴う“希望転勤”は可能でしたが、対象範囲を拡大しています。これまでも結婚を控えたケースなどには準用してきたところ、線引きが分からないなどの声もあり、改めて制度化を図りました。転勤の申請に当たり、書類の提出などは特段求めません。

同社では全国転勤型の総合職に対し、ジョブ・ローテーションを通じて育成を行います。配置転換を繰り返すなか、従業員が自らの事情に沿って勤務地を選択可能とし、将来の人生設計を考えやすくするのが狙いです。

過去3年間に既存の希望転勤制度を利用した人数は、育児・介護など家庭の事情による「希望転勤制度」が67人、配偶者の転勤に伴う「おしどり転勤制度」が18人となっています。

送検

開口部に手すり等を設置せず 墜落労災で解体業者を送検 福島労基署

福島労働基準監督署は、2024年3月に発生した労働災害に関連して、解体工事業者と同社代表取締役を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いで福島地検に書類送検しました。開口部に手すりおよび中さんを設けるなどの墜落防止措置を講じていなかった疑いです。

労災は福島市内の天井耐震工事現場で発生しました。同社は現場に2次下請として入場しており、建物内の高さ約5メートルの場所に1.7メートル四方の開口部を設け、労働者に解体した天井ボードを袋詰めして地上へ投下する作業を行わせていました。

被災した労働者は、同社とは別の2次下請の労働者。同社の労働者とともに作業をしていた際に、開口部から墜落し、死亡しています。

監督指導動向

フォーク用途外使用防ぐ 10種の“安全標識” 千葉労働局

千葉労働局は、2024年10月現在、死亡災害の発生件数が前年同期比70%増の29件に上っていることを受け、実際の労働災害事例を基にした「労災防止ピクトグラム」を作成しました。フォークリフトの用途外使用が原因となった死亡災害を踏まえたピクトグラムなど、計10種類を設けています。ピクトグラムは同労働局のホームページからダウンロード可能。作業場内での掲示や、安全教育資料への活用を促しています。

2024年1月、プラスチック製品製造業の労働者が、フォークリフトの用途外使用により死亡しました。労働者は高さ4メートルのタンクに備え付けられた配管の詰まりを取り除くため、フォークに4枚のパレットを載せ、タンクに乗り移る足掛かりとして使用していました。タンクからパレットに戻る際、バランスを崩して墜落しています。

ピクトグラム公開とともに、安全衛生活動の総点検を促すリーフレットも作成しました。死亡災害がめだつ製造業、建設業、陸上貨物運送業の業種ごとに、死亡災害の事例を掲載しています。類似の作業場所の安全対策の再確認を促し、リスクアセスメント実施を求めました。

調査

脳卒中や心臓病等に関する世論調査(内閣府)

調査は全国の18歳以上を対象に実施し、1656人の回答を得られました。

問 現代の日本の社会が、疾病発症後も働き続けられる環境だと思うか

現代の日本が、疾病発症後も働き続けられる環境だと思うかを尋ねています。心臓病では、「そう思わない」と「どちらかといえばそう思わない」と回答した割合の合計が68.0%でした。

働き続けることが困難な理由を複数回答で尋ねたところ、「身体に過度な負担がかからないような業務への配置転換が難しいから」が61.2%で最も高くなっています。「治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから」が60.2%で続きます。

発症後に手足の麻痺が残る場合がある脳卒中では、働き続けられる環境だと思わないと回答した割合の合計は77.1%でした。理由では、「後遺症のために日常生活における動作などが変化したことに対する職場の環境が整っていないから」が最も高く、75.6%に上りました。

問 働き続けることを難しくさせている理由は何だと思うか

心臓病 脳卒中
身体に過度な負担がかからないような業務への配置転換が難しいから…………………………………………61.2% 後遺症のために日常生活における動作などが変化したことに対する職場の環境が整っていないから………75.6%
治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから…60.2% 治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから…55.1%
治療・検査と仕事の両立が精神的に困難だから…52.7% 治療・検査と仕事の両立が精神的に困難だから…50.0%
体調が悪いときに職場が休むことを許してくれるかどうか分からないから……………………………………34.8% 体調が悪いときに職場が休むことを許してくれるかどうか分からないから……………………………………30.9%

実務に役立つQ&A

0.5人どう計算? 障害者雇用率が引上げ

障害者雇用率が令和8年7月から、2.7%に引き上げられます。今後、当社も対象になる可能性があります。対象となるのは、労働者数37.5人以上ということですが、0.5人とはどういう意味でしょうか。

事業主に対しては、雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数以上の障害者を雇用する義務が課されています(障害者雇用促進法43条)。

常用労働者数に短時間労働者数を加えた人数に対し、障害者雇用率(令和8年6月30日までの間は、2.5%、障雇令附則3条)を乗じた数字が1人以上(端数切捨て)になるかどうかで判断されることとなります。算式の短時間労働者数については、0.5を乗じます。いわゆる正社員37人にパートら0.5人を加え、令和8年7月以降2.7%を乗じると、「1」を上回るため、雇用義務が発生します。

短時間労働者とは、週の所定労働時間がいわゆる正社員と比べて短いだけでなく、20時間以上30時間未満であることが条件となっています(平6・3・8労告12号、「障害者雇用促進法の逐条解説」)。

身近な労働法の解説 ―違約金制度の禁止―

労基法16条では、違約金制度や損害賠償額予定の制度を禁止しています。今回は、違約金制度の禁止について解説します。

1.賠償予定の禁止(16条)

労基法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。

2.違約金制度の禁止とは

「違約金」とは、債務不履行の場合に債務者が債権者に支払うべきものとあらかじめ定められた金銭であって、契約当事者間で契約に附随して定めるものです。労働契約の当事者(労働者と使用者)間において、労働契約期間の途中退職など、労働契約に基づく労働義務を労働者が履行しない場合に、債務者(労働者本人もしくは親権者または身元保証人)の義務として課せられるものです。

労働契約に附随して定める違約金制度とは、労働義務不履行があれば、それによる損害発生の有無にかかわらず、使用者は約定の違約金を取り立てることができる旨を定めたものです。

一般法である民法では、契約自由の原則に基づき違約金を定めることを認めていますが、労働関係においては労働者の足止め策に利用され、身分的拘束を伴うこととなりますので、これを民法の特別法として禁止しています。

3.違約金を定める契約

禁止される違約金契約は、労働義務不履行による実損の有無にかかわらず一定の金銭を支払う旨を定めているものです。例としては、「3年以内に退職した場合は、会社に対し50万円を支払うこと」、「無断欠勤した場合は罰金3万円」、「遅刻した場合は罰金1万円」などがあり、就業規則に定める減給処分(制裁)や労働不足分の控除(ノーワークノーペイ)とは別のものです。

違約金を定める契約の締結当事者としての使用者の相手方は、労働者に限定されていません。契約の相手方が労働者自身の場合はもちろん、労働者の親権者または身元保証人が、労働者の行為について違約金の支払い義務を負担する場合の契約も含まれます。さらに、労働者が負担義務を負った違約金の支払いについて保証する保証人または連帯債務者の保証契約も含まれるものと解されています。

4.本条違反

本条に違反して、使用者が労働契約の不履行について違約金を定める契約をした場合には、使用者は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)。本条違反は、違約金を定める契約をしたときに違反が成立します。違約金の取り立てや現実に徴収したときに違反が成立するものではありません。

また、本条違反の違約金を定める契約は無効となります。労働者以外の親権者または身元保証人が身元保証契約において本条違反の契約を定めた場合も、無効となると解されています。このような契約があったとしても、使用者は違約金を請求することはできません。

今月の実務チェックポイント

2025年5月26日施行 戸籍に振り仮名表記

令和5年6月2日、戸籍法(昭和22年法律第224号)の一部改正を含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第48号。以下「改正法」といいます)が成立し、同月9日に公布されました。

従前、戸籍においては、氏名の振り仮名は記載事項とされておらず、戸籍上公証されていませんでしたが、この改正法の施行により、戸籍の記載事項に氏名に加えて、新たにその振り仮名が追加されることになりました。

改正法は、令和7年5月26日に施行されます。

【手続きの流れ】

住民票において市区町村が事務処理の用に供するため便宜上保有する情報等を参考に、本籍地の市区町村長から、氏名の振り仮名に関する情報が改正法の施行日(令和7年5月26日)以降通知されます。誤った振り仮名が記載されていた場合は、次の届出が必要です。

改正法の施行日後1年以内に限り、氏名の振り仮名の届出をすることができます。この届出が受理されれば、届け出た氏名の振り仮名が戸籍に記載されることとなります。正しい場合は届出をしなくても、通知に記載の振り仮名が戸籍に登録されます。

氏(姓)が誤っている場合 原則として戸籍の筆頭者が単独で届け出ることになります(筆頭者が除籍されている場合は、その配偶者、その配偶者も除籍されている場合は、その子が届出)。
名が誤っている場合 既に戸籍に記載されている者がそれぞれ届出人となります。
届出方法 マイナポータルから届出または市区町村の窓口や郵送

届出がなかった場合に戸籍に記載された振り仮名は、一度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに変更をすることができます(上記の届出を行った後に氏名の振り仮名を変更する場合は家庭裁判所の許可が必要となります)。

通知に記載の氏名の振り仮名が誤っていて変更した場合、年金受給者および就労している方については、年金の受取り・給与振込みの関係で振込不能になってしまう可能性もあり、金融機関へ届けが必要になります。

その他クレジットカード会社、公共料金等の引き落としなども想定されます。

変更のタイミングなども確認しスムーズに手続きがされるよう、事前にアナウンスをしておくと良いかも知れません。

なお、この制度開始後に出生や帰化等により、初めて戸籍に記載される者については、この手続によらず、出生届や帰化届等の届出時に併せてその振り仮名を届け出ることとなります。

助成金情報

両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)

不妊治療と仕事の両立のために職場環境の整備に取り組むとともに、不妊治療両立支援プランの策定および同プランに基づく措置を実施し、不妊治療に利用可能な休暇制度や両立支援制度を利用させた中小企業事業主に対して助成するものです。

 

【概要】

・環境整備、休暇の取得等

労働者が不妊治療両立支援プランに基づき、不妊治療休暇制度または不妊治療と仕事との両立支援制度を合計5日(回)利用した場合

・長期休暇の加算

上記の支給を受けた事業主であって、労働者が不妊治療休暇制度を20日以上連続して取得し、職場復帰して3カ月継続勤務した場合

※不妊治療とは、妊娠を希望していても一定期間妊娠しない男女労働者が妊娠を希望して行う医学的治療をいい、不妊治療のための検査および不妊の原因となる疾患に係る治療を含みます。

・支給対象となるのは中小企業のみ

中小企業の範囲 資本金の額または出資の総額 常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む) 5000万円以下 または 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

【支給要件】

次の要件をすべて満たすこと(原則として対象労働者が制度利用開始する前日までに)

①企業トップが制度の利用促進についての方針を全労働者に周知していること

②不妊治療休暇・両立支援制度について、労働協約または就業規則に規定し、規定する範囲内で運用していること。また、不妊治療休暇・両立支援制度について、労働者に周知していること

③不妊治療と仕事との両立に関して、労働者の希望または課題の把握を行うため、社内ニーズの調査を実施していること

④両立支援担当者を選任し、相談に対応していること

※両立支援担当者とは、不妊治療と仕事との両立支援を図るため、事業主または雇用する労働者の中から事業主が選任した、次のイおよびロの業務を実施する担当者です。

イ 不妊治療を受ける労働者からの相談への対応

ロ 不妊治療を受ける労働者のプランの策定

⑤対象労働者について、不妊治療両立支援プランを策定していること

⑥対象労働者について、プランに基づき、不妊治療休暇・両立支援制度のうちいずれかの制度または各制度を組み合わせて、一の年度内に当該労働者の所定労働日において、合計5日以上利用させたこと

⑦(長期休暇の加算)不妊治療休暇を一の年度内に対象労働者に20日以上連続して取得させ、当該休暇取得後、原則として原職等に復帰させ3カ月間継続勤務させた場合に加算する。

【支給額】

1 環境整備・休暇の取得等     30万円

2 長期休暇の加算         30万円

 

※ 制度の詳細は厚生労働省HP「不妊治療と仕事との両立のために」をご参照ください。

今月の業務スケジュール

労務・経理 慣例・ 行事
  • 12月分の社会保険料の納付
  • 12月分の源泉徴収所得税額・特別徴収住民税額の納付
  • 給与支払報告書の提出
  • 法定調書の提出
  • 源泉徴収票の交付(従業員本人に渡す)
  • 固定資産税の償却資産に関する申告
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を従業員から回収(社内で保管)
  • 労働保険料(第3期分)の納付(延納申請をした場合)

●労働者死傷病報告の提出(休業4日未満の労働災害等、10~12月分)

  • 初出式(新年祝賀会)
  • 年賀状の返礼
  • 年始回り
  • 新年会
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