2024(令和6)年5月24日、育児介護休業法等の改正法が国会で可決・成立。
労働者が子育て・介護と仕事を両立できるような支援をすることが目的です。
改正法による変更点は、大きく分けて以下の3点です。
① 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
② 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
③ 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
全企業が対象となり、育児休業・介護休業などに関する新たな義務が発生するため、対応のポイントを押さえる必要があります。
令和7年改正事項一覧
令和7年4月1日施行 事項
- 子の看護休暇の見直し
- 所定外労働の制限の対象となる子の範囲の拡大
- 300人超の企業に育児休業等の取得状況の公表の義務付け
- 育児短時間勤務の代替措置の追加
- テレワーク等の措置を努力義務化
- 介護離職防止のための措置の義務化
令和7年10月1日施行 事項
- 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け
- 柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け
それぞれの改正内容について詳しく解説
令和7年4月1日に施行される内容
子の看護休暇について
改定前 | 改正後 | |
名称 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
対象となる子の範囲 | 小学校就学の始期に達するまで | 小学校3年生修了まで |
取得事由 | 病気 予防接種・健康診断 | 病気・けが 予防接種・健康診断 感染症に伴う学級閉鎖等 入園(入学)式、卒園式 |
労使協定により除外できる対象者 | 週の所定労働日数が2日以下 引き続き雇用された期間が6ヶ月未満 | 週の所定労働日数が2日以下 |
第 14 条(子の看護休暇)
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、(中略)子の看護休暇を取得することができる。
所定外労働の制限対象が拡大
改正前 | 3歳に満たない子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けられる。 |
改定後 | 小学校就学前の子を養育する労働者は、所定外労働の制限を受けられるようになる |
第16条(育児・介護のための所定外労働の制限)
3歳に満たない子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない
育児短時間勤務の代替措置としてテレワークを追加
改正前 | 業務の性質等に照らして育児短時間勤務措置の実施が困難と認められる業務に従事する労働者について労使協定により適用除外とした場合、代替措置として次の措置を講じなければならない。 ①育児休業に関する制度に準ずる措置 ②フレックスタイム制 ③始業・終業の繰上げ・繰下げ ④事業所内保育施設の設置運営その他 これに準ずる便宜の供与 |
改正後 | 代替措置として挙げられている制度に「テレワーク」が追加される。 育児短時間勤務が困難な業務に従事する従業員を労使協定により対象外とする場合には、その旨就業規則に規定するとともに、その代替措置を規定する必要があります。 |
育児のためのテレワーク導入が努力義務化
改正前 | なし |
改正後 | 3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講じるよう努めなければならない。 |
介護休業改正内容
個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置が義務化
改正前 | なし |
改正後 | ・介護に直面したと申し出た従業員に対して「個別の周知」・「意向確認」を行う ・介護に直面する前の段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供 ・仕事と両立支援制度を利用し易い雇用環境の整備(詳細は省令) ・要介護状態の対象家族を介護する従業員がテレワークを選択出来るよう努める ・介護休暇の協定除外要件を変更(「継続して雇用された期間が6か月未満の労働者」を削除) |
介護離職防止のための個別の周知・意向確認等の措置について
改正項目 | 改正の概要 | 実務への影響 |
介護休暇の見直し | 労使協定により制度利用の対象外とすることができる労働者の範囲が変更された。 (「継続して雇用された期間が6か月未満の労働者」の要 件が撤廃) | 入社間もない労働者であっても介護休暇の制 度が利用出来るようになる |
介護両立支援制度等の 個別周知、意向確認の義務付け | 家族を介護することとなった労働者が申出た場合、必要な内容を周知し意向確認を行わなければならない。 | 育児休業に関する個別周知、意向確認と同様、 面談や書面交付を行うことが想定されている |
介護両立支援の早期の 情報提供の義務付け | 労働者が40歳に達した日の属する年度等の一定の期間 に、介護休業に関する制度、介護に関する両立支援制度 等について情報提供を行わなければならない | 両立支援制度等の情報を記載した資料を配布 する等の情報提供を一律に行うこと等が想定 されている |
介護両立支援制度等を利用し 易い雇用環境整備の義務付け | 介護休業等の申出が円滑に行われるように以下のいず れかの措置を講じる必要がある。 ①研修の実施 ②相談体制の整備 ③その他省令で定める雇用環境の整備に関する措置実務への影響 | 育児休業に関する措置とおおむね同様となる ことが想定されている。 「③は介護に関する両立支援制度の利用事例 の収集・提供」等となる予定 |
介護期のテレワークの 努力義務化 | 家族の介護を行う労働者が在宅勤務を行うことが出来る 措置を講じるよう努めなければならない。 | 介護休業等や介護のための所定労働時間短 縮措置とあわせて在宅勤務制度を利用できる ように努める必要があります |
令和7年10月1日に施行される内容
柔軟な働き方を実現するための措置等が事業主の義務に!
改正前 | なし |
改正後 | ・3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する 柔軟な働き方を実現するための措置を講じなければならない。 〇 始業時刻等の変更 〇 テレワーク等(10日/月) 〇 保育施設の設置運営等 〇 新たな休暇の付与(10日/年) 〇 短時間勤務制度 上記のから2以上の制度を選択して措置を講じなければならない |
個別の意向聴取・配慮が義務化
時期 本人又は配偶者が妊娠出産等を申し出たとき
現 行 | 育児休業制度の個別周知・意向確認 個別周知と意向確認 事業主は、労働者に対して育児休業制度等の周知と育児休業・産後パパ育休の取得意向を確認するために面談等の措置を講じなければならない |
改正後の プラス | 個別の意向の聴取と配慮 子や家庭の状況により、両立が困難となる場合もあるため、労働者の離職を防ぐ観点から、意向(勤務時間帯や勤務地、両立支援制度の利用期間の希望等)を確認しなければならない 意向の配慮 意向を確認した後は自社の状況に応じ、事業主はその意向に配慮しなければならない |
時期 3歳になるまでの適切な時期
現 行 | 「柔軟な働き方を実現するための措置」の個別周知・意向確認 事業主は労働者に対して制度等の周知と利用の意向を確認するために面談等の措置を講じなければならない |
改正後の プラス | 個別の意向の聴取と配慮 子や家庭の状況により、両立が困難となる場合もあるため、労働者の離職を防ぐ観点から、意向(勤務時間帯や勤務地、両立支援制度の利用期間の希望等)を確認しなければならない 意向の配慮 意向を確認した後は自社の状況に応じ、事業主はその意向に配慮しなければならない |
定期的な面談
・妊娠出産等の申し出時
・「柔軟な働き方を実現するための措置」にかかる面談等
・育児休業からの復職時
・短時間勤務制度や「柔軟な働き方を実現するための措置」の利用期間中などの機を捉え、定期的な面談を行うことが望ましいこととする(指針)
雇用保険法の改正
①出生後休業支援給付金
子どもの出生後一定期間(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間)以内に被保険者と配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、
被保険者の休業期間について28日間を限度に休業開始時賃金の13%相当額を上乗せして受給できる制度です。
※社会保険が免除になるので、手取り10割という認識です。
②育児時短就業給付金
2歳未満の子を養育する雇用保険被保険者が時短勤務をしている場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給する制度です。
企業に求められることは
- 就業規則の見直し
これを機に新しい時代に合った就業規則を作成しましょう。 - 従業員への周知
新しい制度や拡充された制度について、従業員にわかりやすく説明し、理解を促進 - 管理職への研修
制度の変更点や、部下からの休業申請への対応方法などについて、管理職向けの研修を実施します。 - 業務体制の見直し
休業取得者の増加や柔軟な働き方の導入に備え、業務分担や人員配置を再検討します。
助成金のご案内
柔軟な働き方の制度導入で両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)が活用できます。
趣旨
働き続けながら子の養育を行う労働者の雇用の継続を図るため、子が3歳以降小学校就学前
までの労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、制度の利用者を支援する取組を
行った中小企業事業主に対して、助成金を支給することにより、職業生活と家庭生活の両立支
援に関する取組を促し、もってその労働者の雇用の安定に資することを目的とする。
助成金の種類
助成金は本支給要領に定める次の場合に支給する。
①子の養育を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、制度を利用した労
働者に対する支援を行った場合
②育児休業等に関する情報公表加算:①の対象となる事業主が、育児休業取得率等に関する
自社の情報を公表した場合(①に加算して支給)
適用単位
助成金は、事業主単位で支給するものであり、事業所単位で支給するものではない。
法人又は個人が複数の事業、事業所を営んでいる場合であっても、当該法人又は当該個人を
一事業主とする。