最新・行政の動き
賃金上昇で追加給付 専門実践訓練見直し 雇用保険法施行規則改正案
厚生労働省は、教育訓練給付の拡充を盛り込んだ雇用保険法施行規則等改正案を労働政策審議会雇用保険部会に示し、「おおむね妥当」とされました。専門実践教育訓練給付金の対象となる講座の受講前後で賃金が5%以上上昇した場合、追加給付として給付率を10%上乗せします。それに伴い、現行制度において70%だった最大給付率は80%となります。支給額の上限は年間64万円。施行日は今年10月1日。
同給付金は、中長期的なキャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練の受講者が対象で、原則として費用の50%を支給しています。受講後に資格を取得し、就職した、または雇用されている場合には追加給付として20%を上乗せしています。個人のリスキリングに対する支援を強化するため、雇保則改正によって、賃金上昇に伴う追加給付を新たに創設します。
賃金が5%以上増加したかどうかについては、訓練開始日前の直近の離職における賃金日額と、新たに雇用された日から1年経過するまでの期間における連続6カ月間の賃金を基礎とする「みなし賃金日額」を比較して判断します。在職者の場合は、訓練開始日の前日をもとに算定する賃金日額相当額と、資格取得から1年経過するまでの連続6カ月間とを比較します。
申請には、引上げ後の賃金額についての事業主の証明が必要になります。
このほか、特定一般教育訓練給付金についても、10%の追加給付を新設します。資格を取得し、就職した場合が対象となります。
ニュース
6割超が職安法違反
医療等3分野の監督結果 厚労省
医療・介護・保育の3分野の有料職業紹介事業のうち、6割を超える事業者が職業安定法等に違反していることが、厚生労働省実施の集中指導監督結果で明らかになりました。
3分野の職業紹介事業については、短期間での離職がめだつとして、昨年6月の「規制改革実施計画」において、転職勧奨とお祝い金規制にかかる集中監督を行うとしていました。厚労省は昨年8月~今年5月にかけて、1152事業所に指導監督を実施。そのうち716事業所(62.2%)で職安法等の違反がみられました。
お祝い金に関する違反は25件となりました。面接実施時に数千円の電子ギフトカードを支給した例や、知人を紹介した人と紹介を受けて求職登録した人に数万円の旅行券を支給した例などがみられました。職安法に基づく指針では、令和3年4月から「就職お祝い金」などの名目で金銭を提供し、求職申込みの勧奨を行うことを禁止しています。
手数料規制違反は409件に上りました。厚労省に届け出た手数料の上限を超える額の徴収や、求人者・求職者に手数料を書面で明示しないなどの違反が発覚しています。
都道府県労働局に設置した特別相談窓口には、「紹介手数料の一部が求職者へ支度金として支払われている」や「求職者確保キャンペーンと称して金品を提供する旨の広告が出ている」などの苦情が寄せられました。
最大170万円を交付
育児や不妊治療制度に 神奈川県
神奈川県は、育児中の社員や外国人労働者が働きやすい職場環境の整備に取り組む中小企業を後押しするため、奨励金パッケージを開始しました。育児コースでは、出産立会休暇や学校行事参加休暇を導入した企業に、最大20万円を支給します。仕事と育児・介護の両立や不妊治療など計5コースを設けており、すべて満たした企業には170万円を交付します。
5コースの内訳は、育児、介護、不妊治療、男性の育児休業、外国人労働者。両立支援制度の創設や、社内相談窓口の設置などを受給要件としています。
たとえば不妊治療コースでは、社内ニーズを調査したうえで、休暇や費用助成の制度を整備し、社内相談窓口を設置した場合に、20万円を受給できます。テレワークなど、柔軟な働き方を可能とする制度も対象になります。
外国人労働者コースでは、就業規則を多言語化した場合に20万円を受け取れます。さらに一時帰国休暇制度の創設や、社内マニュアルを多言語化したときは、20万円が加算されます。申請日時点で、常時雇用する外国人が1人以上いることを要件としています。
募集期間は今年12月27日まで。男性育休コースのみ、来年2月24日まで申請を受け付けます。
賞与評価 部下の離職率など指標に 営業実績以外で10% 大東建託
大東建託㈱は、全国204拠点の全支店長の賞与評価に、部下の離職率や年次有給休暇取得率、障害者雇用率、男性の育児休業取得率などの「支店健全経営度」を測る指標を導入しました。
今年4~9月を対象期間とする10月の人事評価から適用していきます。従来の営業実績による評価のウエートを90%に抑え、10%を同指標で評価します。
「成果だけの追求では、持続的な成長は見込めない」(同社広報部)とし、営業職以外の貢献をみえやすくするとともに、支店長に対して「質より量」から「効率・生産性重視」への意識転換、多様な人材が活躍できる環境づくりを促します。
整備士に3コース制 職場環境改善へ事例集 自動車整備連
全国各地の自動車整備業団体を会員とする日本自動車整備振興会連合会は、働きやすい職場作りに取り組んでいる事業者の好事例集を作成しました。整備士が多様なキャリアプランを選択できる制度を導入した㈱トータス(神奈川県大和市)など、全10社を掲載しています。
同社では、3つのコースを用意し、整備に関するスキルの向上を志す「専門職クラス」、営業などにもマルチに活躍する「スペシャリストクラス」、管理職をめざす「管理職クラス」に分けました。これまで接客レベルが高い整備士が評価されやすかった点を改善し、人材定着につなげています。
時間外労働の削減に取り組んだ㈱マッハ(福岡県北九州市)では、整備作業を伴う注文を完全予約制にし、入庫量を平準化しました。急な注文で昼食時間が中断されることもなく、閉店後にも作業がずれ込まなくなっています。
事例集は、国土交通省が自動車整備事業者の職場環境改善に向け、昨年3月に取りまとめたガイドラインの内容に合わせて作成しました。ガイドラインでめざすべき職場像として示された「働き方・労働条件」、「人間関係・コミュニケーション」、「人材開発」、「待遇(働く価値)」の4つの要素のいずれかに取り組んだ事例を収集しています。
監督指導動向
教育状況の再確認を
経験3年未満で労災多発
岡山労働局・製造業向けリーフ
経験が浅い労働者に対する教育の定着状況の再確認を――岡山労働局は、機械・金属製品製造業での労働災害防止に向けたリーフレットを作成し、管内事業場へ対策を呼び掛けています。今年5月末までに同業種で発生した休業4日以上の労災は86件に上り、過去5年間で最多となりました。経験年数が3年未満の労働者による労災が、約半数の46件(53%)を占めています。
リーフでは、労働者を初めての作業に就かせる場合、身に着くまで繰り返し教育するよう求めました。教育の定着状況を確認し、定常作業であっても危険が潜んでいないか再点検するべきと促しています。
令和元~5年に機械・金属製品製造業で発生した労災は961件で、うち経験3年未満の労働者が被災した割合は41%でした。今年は5月末時点で53%となっており、めだった上昇傾向を示しています。事故の型別で最も多いのは腰痛やねんざなどの「動作の反動・無理な動作」で、13件発生しています。
同労働局健康安全課は「要因として、コロナ禍からの経済活動の回復が挙げられる。業務変更があった者や新規入職者が増え、業務の理解度に問題があると考えられる」と話しています。
送検
フォーク使用も接触の防止怠る
品川労基署
東京・品川労働基準監督署は、歩行中のトラック運転者がフォークリフトの荷の下敷きになり死亡した事故に関連して、一般貨物自動車運送事業者と同社代表取締役を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで東京地検に書類送検しました。駐車場内での積込み作業に当たり、カラーコーンによって歩行者通路を確保するなど、フォークリフトとの接触防止措置を講じていなかった疑いです。
労働災害は令和4年7月に、品川区の物流センター内で発生しました。同社の労働者がフォークリフトで高さ約2メートルのコンテナをトラックに積み込んでいる最中、コンテナが歩行中の運転者に衝突。ぶつかったことに気付かずそのままコンテナを下ろしてしまい、運転者がコンテナの下敷きになり、死亡しています。
調査
3割が就活セクハラ経験 職場のハラスメントに関する実態調査 厚労省
先月に続き、厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」を取り上げます。2020~22年度卒業者1000人に、インターンシップ中や就職活動中に受けたセクハラ(就活等セクハラ)の状況を尋ねたところ、インターンシップ中にセクハラを受けたと回答した割合は30.1%でした。就活中に受けたと回答した割合は31.9%となっています。
セクハラを受けた割合は、いずれも男性の方が女性よりも高くなっています。インターンシップ中での割合は、男性が32.4%で、女性(27.5%)よりも4.9ポイント高くなりました。就職活動中では男性は34.3%、女性は28.8%でした。
セクハラ行為者としては、インターンシップ中は「インターンシップで知り合った従業員」が47.4%で最も多くなっています。就活中では、「大学のOB・OG訪問を通して知り合った従業員」(38.3%)、「学校・研究室等へ訪問した従業員、リクルーター」(37.0%)の順に多い結果となりました。
インターンシップ中/インターンシップ以外の就職活動中に
就活等セクハラを受けた際の志望企業・団体の従業員規模
実務に役立つQ&A
養育特例の対象に? 育休で賞与減ったら
育児休業期間と賞与の支払い時期が重なる従業員がいます。復帰後に賃金が低下したときには、年金額の計算で不利にならないよう「養育特例」の仕組みがあります。賞与が前年より下がったときに前年の額とみなす仕組みはないのでしょうか。
子が3歳に達するまでの養育期間中に標準報酬月額が低下したときでも、年金額に影響しないように養育前の標準報酬月額に基づき年金額を受け取ることができるのが、養育特例です(厚年法26条)。
養育特例の対象となるのは標準報酬月額です。厚年法26条は、概要、標準報酬月額が子を養育することとなった日の属する月の前月の標準報酬月額を下回る月について、従前の標準報酬月額を(年金額の計算の基礎となる)標準報酬月額とみなす、としていて従前の標準賞与額は対象としていません。
なお、育休中に賞与を支給して厚生年金等の保険料が免除されるときでも(法81条の2)、将来年金額を計算する際には保険料を納めた期間として扱われます(日本年金機構)。
身近な労働法の解説 ―直接差別の禁止②―
男女雇用機会均等法6条では、配置・昇進・降格・教育訓練・福利厚生・職種の変更・雇用形態の変更・退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別の禁止について規定しています。
1.男女雇用機会均等法6条
法6条では、「事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない」と規定しており、次の①~④についての差別的取扱を禁止しています。
①労働者の配置(業務の配分および権限の付与を含む)、昇進、降格および教育訓練
②住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの
③労働者の職種および雇用形態の変更
④退職の勧奨、定年および解雇ならびに労働契約の更新
2.差別的取扱をしていると認められる例(指針)
(1)配置、昇進、職種の変更、雇用形態の変更、労働契約の更新
・一定の職務への配置・一定の役職への昇進・職種の変更・雇用形態の変更・労働契約の更新に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること、その条件を男女で異なるものとすること、能力および資質の有無等を判断する場合にその方法や基準について男女で異なる取扱いをすること、男女のいずれかを優先すること。
・配置における業務の配分・権限の付与・配置転換に当たって、男女で異なる取扱いをすること。
・職種の変更・雇用形態の変更について男女で異なる取扱いをすること。
(2)降格、退職の勧奨
・降格・退職の勧奨に当たって、その対象から男女のいずれかのみとすること、その条件を男女で異なるものとすること、能力および資質の有無等を判断する場合にその方法や基準について男女で異なる取扱いをすること、男女のいずれかを優先すること。
(3)教育訓練、福利厚生
・教育訓練・福利厚生の措置の実施に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること、その条件を男女で異なるものとすること
・教育訓練の内容について男女で異なる取扱いをすること。
(4)定年
・定年の定めについて、男女で異なる取扱いをすること
(5)解雇
・解雇に当たって、その対象から男女のいずれかのみとすること、その対象を一定の条件に該当する者とする場合において当該条件を男女で異なるものとすること、能力および資質の有無等を判断する場合にその方法や基準について男女で異なる取扱いをすること、男女のいずれかを優先すること。
なお、(1)のうち配置・昇進・職種の変更・雇用形態の変更、(3)教育訓練に関し、法8条の措置(ポジティブ・アクション)を講ずる場合については、この限りではありません。
今月の実務チェックポイント
海外勤務者の報酬について
今回は海外で勤務する従業員の報酬等について、標準報酬月額の算定の基礎となる「報酬等」に含まれるのか否かを解説します。
日本国内の厚生年金保険適用事業所で雇用関係が継続したまま海外で勤務する場合に、出向元から給与の一部(または全部)が支払われているときは、原則、健康保険・厚生年金保険の加入は継続します。
日本国内の適用事業所および海外の事業所双方から給与等が支給される場合に、「報酬等」に算入しないケースと「報酬等」に算入するケースがあります。実質的に国内のA事業所から支払われていることが確認できる場合は、海外のB事業所から支払われる給与等も「報酬等」に算入することになります。
- 報酬等に算入しないケース
適用事業所(国内企業)の給与規定や出向規定等に海外勤務者に係る定めがなく、海外の事業所における労働の対償として直接給与等が支給されている場合は、適用事業所から支給されているものではないため、「報酬等」には含めません。
<例>国内のA事業所に勤務する被保険者が海外のB事業所に転勤し、A事業所およびB事業所の双方から給与をうけているが、B事業所から支給される給与等はB事業所の給与規定に基づいている場合(A事業所との雇用関係は継続)
+
この場合は、A事業所の給与規定に基づき支払われている給与等が「報酬等」になり、B事業所から支払われる分は算入しません。
- 報酬等に算入するケース
<例>国内のA事業所に勤務する被保険者が海外のB事業所に転勤し、A事業所およびB事業所の双方から給与をうけているが、B事業所から支払われる給与等もA事業所の給与規定に基づいている場合(A事業所との雇用関係は継続)
+
この場合は、A事業所の給与規定や出向規定等に基づき、実質的にA事業所から支払われていることが確認できることになり、A事業所+B事業所から支払われる給与等の合計額が「報酬等」になります。
報酬等に算入するケースで、海外の事業所から外貨で給与を支払う場合は、実際に支払われたが外貨の金額を、支払日の外国為替換算率を用いて、日本円に換算した金額を報酬額とします。
今回のケースに当てはまらない場合は、年金事務所へご確認下さい。
助成金情報
人材確保等助成金(テレワークコース)
人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、中小企業事業主が、在宅、またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワーク勤務を制度として導入することを目的として就業規則等の作成・変更、テレワーク用通信機器等の導入・運用等を実施し、テレワーク勤務を適切に導入・実施した場合およびテレワーク勤務の導入後も引き続きテレワーク勤務を実施し従業員の離職率の低下について効果をあげた場合に支給するものです。
良質なテレワークを制度として導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主が助成対象となります。
テレワーク勤務を、新規に導入する事業主の方および試行的に導入している、またはしていた事業主の方に加え、令和6年4月1日から既に導入済みで実施を拡大する事業主の方も対象となります。
1.機器等導入助成
【支給要件】
・テレワーク実施計画認定日以降、機器導入助成の支給申請日までに、助成対象となる取組※を1つ以上行うこと。
※助成対象となる取組
①就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
②外部専門家によるコンサルティング
③テレワーク用通信機器等(注)の導入・運用
(注)令和6年4月1日から仮想オフィスに係るサービス利用料、クラウドを用いたコミュニケーションツール・ペーパーレス化ツールの利用料が助成対象となります。
④労務管理担当者に対する研修
⑤労働者に対する研修
・評価期間(機器等導入助成)における、テレワークに取り組む者として事業主が指定した対象労働者のテレワーク実績が、次のいずれかを満たすこと。
- 評価期間(機器等導入助成)に1回以上対象労働者全員がテレワークを実施する または
- 評価期間(機器等導入助成)に対象労働者がテレワークを実施した回数の週平均を1回以上とする
・テレワークの実施促進について企業トップ等からのメッセージ発信を行うなど、労働者がテレワークを実施しやすい職場風土作りの取組を行う事業主であること。
2.目標達成助成
【支給要件】
・評価期間後1年間の離職率が、計画提出前1年間の離職率以下であること。
・評価期間後1年間の離職率が30%以下であること。
・評価期間(目標達成助成)に、1回以上テレワークを実施した労働者数が、評価期間(機器等導入助成)初日から1年を経過した日における事業所の労働者数に、計画認定時点における事業所の労働者数全体に占める対象労働者の割合を掛け合わせた人数以上であること。
3.受給額
対象 | 支給額 |
機器等導入助成 | 1企業あたり、支給対象となる経費の50%
※以下のいずれかの低い方の金額を上限とします。 ・1企業当たり100万円 ・テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円 |
目標達成助成 | 1企業当たり、支給対象となる経費の15%
〈賃金要件を満たす場合は25%〉 ※以下のいずれかの低い方の金額を上限とします。 ・1企業当たり100万円 ・テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円 |
※ 制度の詳細は厚生労働省HP「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」をご参照ください。
今月の業務スケジュール
労務・経理 | 慣例・ 行事 |
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●お中元のお礼状発送 |