最新・行政の動き
過労死等発生企業 再発防止対策を強化 全社的な対応へ指導 厚労省・過労死防止大綱素案
厚生労働省は、今年7月の閣議決定をめざしている新たな過労死等防止対策大綱の素案を作成しました。
素案では、国が取り組む重点対策として、時間外労働の上限規制の遵守徹底や、脳・心臓疾患または精神障害に関する労災保険支給決定が行われた企業における再発防止対策の強化、勤務間インターバル制度の周知などを掲げました。
上限規制については、4月から建設事業や自動車運転業務などでも適用が開始されたことから、労働基準監督署で遵守徹底を図ります。建設業では短い工期設定、自動車運転者では長時間の荷待ちなどが課題になっているため、施主や荷主などの取引関係者に対しても、長時間労働改善に向けた協力を呼び掛けていきます。
一方、過労死等の再発防止対策の取組みとしては、これまで行ってきた発生事業場に対する監督指導・個別指導に加えて、企業本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施します。企業本社への指導は、事業場を通じて実施します。
さらに、一定期間内に複数事案を発生させた企業に対しては、企業の本社を管轄する都道府県労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定を求め、同計画に基づく取組みを企業全体に定着させるための助言・指導(過労死等防止計画指導)を実施するとしました。
ニュース
職安が延長適否判断 育休給付巡り雇保則改正 厚労省
厚生労働省は、子供を保育所に入所させる意思がないにもかかわらず、労働者が育児休業給付の受給期間を延長する目的で自治体へ入所を申し込む行為を防止するため、雇用保険法施行規則を改正し、期間延長手続きを厳格化します。施行は来年4月1日。入所申込みなどに関する労働者本人の申告内容をハローワークが確認し、延長の適否を判断します。
子が1歳および1歳6カ月を超えた後も労働者が育児休業給付を受給するためには従来、保育所の入所を希望したにもかかわらず入所できないことが要件になっていました。その確認は原則として、市区町村が発行する入所保留通知書や入所不承諾通知書で行ってきました。
雇保則改正により、受給を延長する要件として、「市区町村に申し込んだ内容が速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものと公共職業安定所長が認めるものであること」を追加。入所保留通知書に加え、本人が記載する申告書と、市区町村への利用申込書の写しを提出させて、申し込んだ施設が、合理的な理由なく自宅や勤務先から遠隔地の施設のみになっていないかどうかなどを確認します。
“真の睡眠”5時間半 運転者を10日間調査 秋田産保センター
秋田産業保健総合支援センターは、トラック運転者の健康起因事故防止に向け、県内のドライバー109人に行った睡眠調査の結果を公表しました。医学的に「本当に眠っている時間」が、平日で平均5時間21分に留まり、睡眠不足に陥っている状況が明らかになりました。原因が長距離運転による生活習慣の乱れや、運転中の過度な眠気防止策などにあるとして、改善を呼び掛けています。
調査はドライバーに睡眠測定用の機器を連続10日間装着し、睡眠状態を測定しました。平日の「布団に入っている時間」は平均で7時間3分と7時間を超えたものの、「本当に眠っている時間」は5時間21分でした。途中で起きた回数が5回、合計で70分間に及び、良質な睡眠がとれていない実態が浮かび上がっています。
同センターは1日6~8時間が理想的な睡眠時間として、睡眠の質を向上させる10個のポイントをリーフレットにまとめました。眠気覚ましに摂るカフェインには利尿作用があり、夜中にトイレに起きる原因にもなるため、夕方以降は摂取しないよう勧めています。寝酒やタバコは眠りを浅くするため、控えるよう促しました。
あらゆる危険に対応 中小へBCP策定ガイド 東商
東京商工会議所は中小企業向けに、自然災害や感染症、サイバー攻撃などさまざまなハザード(危険)に対応できる「オールハザード型BCP」の策定ガイドを発行しました。ハザードごとにBCPを策定するのではなく、ハザードにより生じる人員や設備などの資源への影響に着目して、経営資源ごとに復旧戦略を検討するよう勧めています。
まずは重要な事業を選定し、事業を遂行するために必要な経営資源として、決裁者やスキルを持った人員を決めておくべきとしました。何らかのハザードによってその人員を活用できなくなった場合の対策を立てておけば、想定外の災害も含めてどんなハザードが起きても対処できます。具体的には、決裁者の代行順位の設定、スキル保有者の在宅勤務などを検討しておくよう促しています。
熟練技術者の「勘」を言語化 人手不足解消へ手引 近畿経産局
近畿経済産業局は、人手不足に悩むものづくり現場に効果的なデジタル化・省力化を促すため、業務を可視化する手法についてのマニュアルを作成しました。
マニュアルは、社内の現場担当者が集まり、グループワーク形式で業務の手順や勘所、改善点を明らかにする際のツールとしてまとめたもの。ツールに沿って手順や勘所を整理することで、正確な現場の実態が明らかになります。簡単な単純作業のみを切り出して、パートタイム労働者などをスポット的に募集するほか、自動化・省力化に向けて新たな機器を導入するなど、効果的な人手不足対策につなげてもらう狙い。作成した手順書は、新人向けの教育ツールとしても活用できます。
手順の書出しに当たっては、担当者自身が「何を」「どのように」やっているかを付箋に記入し、工程ごとに分類します。分類後は、技術者が自身の経験や勘に基づいて行っているノウハウである勘所について、手順ごとに付箋に書き起こします。記入すべき具体的なポイントとして、「その作業を行う意味・判断基準」、「参考にしている資料やデータ」、「作業の留意点」、「不良・クレーム対応におけるポイント」、「オリジナルの工夫」の5点を例示しました。
300講座を無料で提供へ 学び直し 京都府
京都府は、学び直し促進のため、ビジネスやデジタル分野など約300講座をオンラインで受講できるサイト「KYO育tv.」を開設しました。登録料・受講料は不要で、オンデマンド配信のためいつでも受講可能です。
企業の活用を促すため、相談対応も実施。キャリアカウンセラーなどの専門家が、社員教育におけるサイト活用方法などを助言します。
送検
不利益取扱い 県内初の送検 真岡労基署
栃木・真岡労働基準監督署は、労基署への申告を理由に、労働者との雇用契約を解除し、不利益な取扱いをしたとして、栃木県真岡市内の社会福祉法人と同法人理事長を労働基準法第104条(監督機関に対する申告)違反の疑いで宇津宮地検に書類送検しました。
同法第104条での送検は極めて珍しく、栃木労働局管内では初めてとなります。同労基署は、立件に至った証拠について明らかにしていませんが、「一般的には解雇理由証明書や、関係者の供述などを根拠としている」と話しています。
36協定を届け出ずに違法な時間外労働をさせたとして、同法第32条(労働時間)でも送検しました。立件対象期間は昨年3月1日~6月30日。労働者11人に対して1日当たりの法定労働時間を超えて労働させ、うち2人には週40時間を超えて時間外労働をさせた疑いです。
監督指導動向
作業前に型枠点検を 6人死傷受け緊急要請 岡山労働局
岡山労働局は、3月18日に岡山駅付近のマンション新築工事現場で作業員6人が死傷した事故を受け、翌19日に県内の建設業関係団体へ型枠の崩壊・倒壊防止対策を緊急要請しました。岸本英明健康安全課長が、同県建設業協会の猪木雅夫事務局長に要請書を手交しました。事故は地下のコンクリート壁建造のため、型枠に生コンを流し込む打設作業を行っていたところ、設置していた足場とともに型枠が崩壊したもの。5人がケガを負い、1人が死亡しました。
要請では、生コンの量や打設時の衝撃などに対し十分な強度を有する型枠を設置するよう求めました。型枠が計画どおりに設置されているかの確認や、打設前の点検も呼び掛けました。
調査
大卒者で21.7万円 高卒は前年比4.1%増加 東京労働局・初任給調査
東京労働局は、令和6年3月新規学卒者の求人初任給調査結果をまとめました。大学卒は21.7万円で、前年結果と比べて2.4%増加しています。高校卒は4.1%増の18.9万円でした。
年別・学歴別求人初任給の推移
調査は都内ハローワークで受理した求人票記載の初任給を集計したもの。「定期的に支払われる賃金」について、中位数を算出しました。大学卒の産業別の水準は、建設業22.8万円が最も高くなっています。このほか求人申込み件数の多い産業では、製造業と情報通信業が22.0万円、卸売業・小売業が21.6万円、医療・福祉が20.6万円となっています。高校卒は、卸売業・小売業18.7万円、宿泊業・飲食サービス業18.6万円、製造業18.4万円でした。
実務に役立つQ&A
早退した日の扱いは 待期必要な傷病手当金
社内で具合が悪くなって早退して、翌日以降も欠勤が続いたときですが、傷病手当金はいつから支給されるのでしょうか。待期期間が3日必要ですが、早退した初日は働いていますから、翌日以降、丸1日欠勤した日をカウントしていくのでしょうか。
傷病手当金が支給されるのは、労務に服することができなくなった日から起算して、4日目以降です(健保法99条)。待期期間として、労務不能状態が3日間連続することが必要です(昭32・1・31保発2号の2)。
「就業時間中」に労務不能となったとき、その日は待期3日に含まれ、賃金の全部または一部を受けていたか否かは問わない(昭28・1・9保文発69号など)と解されています。その日に早退しても待期1日とカウントします。申請書の記載例をみると、1日目の早退のみ「早」と書くよう求めています。
翌日以降、病院に通院するからといって遅刻や早退したとします。支給期間に関する解釈ですが、午前中のみ出勤し従前の業務に服する場合は通常支給されない(昭31・1・19保文発340号)など、出勤した日として案内するとしています(協会けんぽ)。
身近な労働法の解説 ―就業規則違反の労働契約―
労働契約法12条は、就業規則を下回る労働契約の効力について規定しています。今回は、就業規則違反の労働契約について解説します。
1.労契法12条
「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」と規定しています。
ここでいう就業規則とは、労働者が就業上遵守すべき規律および労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称をいい、労基法89条の就業規則と同様ですが、本条の「就業規則」には、常時10人以上の労働者を使用する使用者以外の使用者が作成する“労基法89条では作成が義務付けられていない就業規則”も含まれるとされています。
2.条文の解説
就業規則は、労働条件を統一的に設定するものであって、労契法においては、一定の場合に、労働契約の内容は就業規則で定めるところとなることを規定しています。
一方、就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた場合および就業規則の変更によっては変更されない労働条件を合意していた場合には、それぞれ、労契法7条ただし書および10条ただし書によりその合意が優先されますが、本条において、就業規則を下回る労働契約の効力について規定しています。その内容は以下のとおりです。
(1)就業規則を下回る労働契約は、その部分については就業規則で定める基準まで引き上げられます。
(2)「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約」とは、例えば、就業規則に定められた賃金より低い賃金等就業規則に定められた基準を下回る労働条件を内容とする労働契約をいうものです。
(3)就業規則で定める基準以上の労働条件を定める労働契約は、これを有効とする趣旨です。
(4)「その部分については、無効とする」とは、就業規則で定める基準に達しない部分のみを無効とする趣旨であって、労働契約中のその他の部分は有効ということです(労働契約そのものが無効となるわけではありません)。
(5)「無効となった部分は、就業規則で定める基準による」とは、労働契約の無効となった部分については、就業規則の規定に従い、労働者と使用者との間の権利義務関係が定まるものであるということです。
3.その他関連法令
・労基法93条では、労働契約と就業規則の関係について、「労働契約法12条の定めるところによる」と規定しています。
・労基法92条では、就業規則と法令または労働協約との関係について「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」と規定しています。
・労契法9条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と規定しています。
今月の実務チェックポイント
高年齢雇用継続給付の縮小
高年齢雇用継続給付について、段階的に縮小されます。
・縮小・廃止のスケジュール
令和6(2024)年度までは現状の給付率15%が維持されます。
令和7(2025)年4月から、新たに60歳に到達する人から給付率が10%に縮小されます。
令和7年度以降、給付金は段階的に縮小、まだ具体的な廃止時期は決定されていません。
<現在の高年齢雇用継続基本給付金受給のための3要件>
① 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
② 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
③ 原則として60歳以後に支払われる各月の給与月額が、「60歳到達時の賃金月額」と比べて75%未満に低下した状態で働き続けていること
・数年の間に準備を
現在60歳定年年齢により再雇用され、上記3要件を満たした場合、高年齢雇用継続基本給付金を受給できる仕組みにより、受給を前提として賃金月額を減額されている社員と、今後段階的に新たな給付率により減額を決定する社員の賃金月額とのバランスをどのように考えるか。更には廃止された際にはどうするか。
賃金月額の決定方法の見直しに加え、就業規則・給与規程等の見直しも必要になります。受給を前提に再雇用後の賃金月額を決定している場合は、高年齢労働者の働き方や賃金について、早めに検討することをお勧めします。
・公務員など雇用保険に加入していない人の再雇用
地方公務員など常勤で正規任用されている場合、雇用保険の適用除外となっているため雇用保険には加入していません。
しかし、定年退職をして、週の所定労働時間が20時間以上の短時間勤務またはフルタイム勤務で再任用された場合は、雇用保険に加入することになります。現在、地方公務員などの定年は、原則として、60歳に達した日以後における最初の3月31日が定年退職日になります (令和5年度から令和13年にかけて段階的に引き上げ65歳定年になります) 。
したがって、再任用がスタートするのは、定年退職後の60歳を過ぎてからということになり、そのときに雇用保険加入になると、「5年以上雇用保険に加入する」という要件を満たすのは65歳を過ぎてからです。
そのため高年齢雇用継続給付金を受給できるケースは通常はないことになります。但し、定年退職前に一般企業に就職した期間があり、5年以上の雇用保険加入期間を満たした場合には受給できる可能性があります。
助成金情報
業務改善助成金
事業場内で最も低い時間あたりの労働者の賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、設備投資等を行った中小企業・小規模事業者等にその費用の一部を助成する制度です。令和6年度中に可能な申請回数は1回までです。
事業場内最低賃金引き上げの計画と設備投資等の計画(機械設備、コンサルティングなど)を作成、提出し、→計画の承認と実施の後、→設備投資等の費用の業務改善助成金
一部を助成という流れになります。
事業場規模50人未満のみを対象として、2023年4月1日から12月31日までに賃金引き上げを実施していれば、賃金引き上げ計画の提出は不要となりました。
【助成額】
本助成金は、引き上げる賃金額および引き上げる労働者数に応じて下表の額が支給されます。
【手続きの流れ】
- 交付申請書・事業実施計画などを、最寄りの都道府県労働局に提出
↓ 審査
- 交付決定後、提出した計画に沿って事業実施
↓
- 労働局に事業実施結果を報告
↓ 審査
- 支給決定
*制度の詳細は厚生労働省HP等をご参照ください。
今月の業務スケジュール
労務・経理 | 慣例・ 行事 |
●自動車税の納付 |
●冷房設備の整備・点検 |