月間人事労務だより~2024年9月号~

最新・行政の動き

地域別最低賃金 5%引き上げ平均1054円へ 中賃審が「目安」答申

厚生労働省の中央最低賃金審議会は、令和6年度の地域別最低賃金の引上げ額の「目安」を全国一律50円に決定し、武見敬三厚生労働大臣に答申しました。

目安どおりに引き上げられた場合の上昇率は5.0%で、最賃の全国加重平均は1054円に達します。引上げ額は昨年実績の43円を上回り、4年連続で過去最大となります。北海道や茨城、滋賀など8道県が新たに1000円に到達し、到達済みの地域を含めると、計16都道府県が1000円以上となります。引上げ後の最高額は東京の1163円で、最低額は岩手の943円。最高額に対する最低額の比率は81.1%となり、80.2%だった昨年に比べ地域間格差が縮小します。

今後、目安を踏まえて都道府県の地方審議会が審議・答申し、引上げ額が決定されます。昨年は、24県が目安を上回る引上げを行いました。

目安の決定に当たり、消費者物価が上昇している状況を重視したほか、賃金上昇率が昨年度を上回る水準にある点も考慮しました。

労務費などの価格転嫁が進んでいない企業があるほか、物価高による倒産が増加傾向にあることから、答申では、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払い能力の面で「50円」の目安額は厳しいと指摘。政府に対し、中小企業などが賃上げ原資を確保できるよう、生産性向上の支援策や、価格転嫁対策の継続的な実施を要望しました。

ニュース

育児のためのテレワーク

週5勤務で「月10日」要件

育介法施行規則など改正案

厚労省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会は7月30日、来年4月から順次施行される改正育児介護休業法に関する省令・告示の改正案を了承しました。

改正育介法では、3歳から就学前までの子を養育する労働者に対する「柔軟な働き方を実現するための措置」を企業に義務付けました。省令・告示において、同措置などの詳細を定めることになっています。同措置は、①始業時刻の変更など、②在宅勤務など、③所定労働時間の短縮、④新たな休暇の付与、⑤仕事と育児の両立を容易にするための措置として省令で定めるもの――から事業主が2つを用意し、うち1つを労働者が選択して利用できるようにするものです。

省令案では、始業時刻の変更などを選択する場合について、「フレックス制」と「始業または終業時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度」のどちらかを講じることとしました。

在宅勤務を講じる場合の要件には、1日の所定労働時間を変更せずに利用できることや、始業または終業時刻を含む連続した時間について時間単位で利用できることなどを盛り込みました。1週間の所定労働日数が5日の労働者の場合、在宅勤務日数は月10労働日とし、週所定5日以外の労働者に対しては労働日数に応じた実施日数としなければならないとしています。

所定労働時間の短縮を講じる際は、原則として1日6時間勤務とする措置を含めるとしました。

新たな休暇の付与に当たっては、1日の所定労働時間を変更することなく、年10日利用できることなどを要件としています。

仕事との両立に向けた措置として省令で定めるものの内容については「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」を示しました。

ジョブ型普及へ研修

模擬体験で制度立案学ぶ

広島県・リスキリング推進

広島県は、県内の経営者や人事労務担当者を対象に、ジョブ型人事制度など「従業員のスキルに応じた評価・処遇制度」をテーマとした研修を開催します。基礎編と実践編を設け、9月に対面形式で行う実践編では、参加者自身の会社を題材にして、職務分析から評価制度の構想立案までを模擬体験してもらいます。スキルを反映した人事制度の整備を支援することで、リスキリングを進める企業を後押しする狙いです。実践編の参加企業は、制度のベースとなる職務記述書の作成方法を習得でき、後日、専門コンサルタントによる個別相談も無料で受けられます。

リスキリングを評価・処遇に反映する企業の取組みを後押しするため、9月以降には、同県の「リスキリング推進宣言」を行った企業の人事担当者を集めたコミュニティを形成します。他社との事例共有や、意見交換の場として活用していきます。

朝食で体内リセット 健康的な食事方法を解説 全国トラック協会動画

全日本トラック協会は、トラック運転者の健康向上対策として、「食生活と健康管理」をテーマとする動画を作成しました。勤務時間が不規則でも朝食を摂って体内時計をリセットするなど、健康的な食事の摂り方を解説しています。協会のホームページ上で公開し、会員企業には運転者への研修に利用するよう呼び掛けます。

協会では、今年度の活動方針として、運転者の健康増進への支援の強化を掲げています。勤務時間が不規則で食事を摂る時間や場所の確保が困難である点や、脂っこいものやスナック菓子ばかりなど偏った食事になりがちな点が課題とみています。糖尿病や心疾患、運転中の体調不良を防ぐため、動画によって健康意識向上を後押しする狙いです。動画は全6種類公開予定で、7月に公開された第2弾では、適切な水分補給の方法を紹介しています。

発注者含め相談窓口 フリーランス新法周知へ 静岡労働局

静岡労働局は、フリーランス新法の11月施行を前に、雇用環境・均等室に専用の相談窓口を設置しました。フリーランスに業務を発注している事業者やフリーランスを対象としたもので、トラブルを未然に防ぐ狙い。発注事業者にどのような義務が課せられるのかや、同法で義務付けられる取引条件の明示方法などを指南します。

相談には雇均室の職員が対応します。担当者によると、すでに複数の事業者から「業務を委託している相手方が、フリーランス新法が定義するフリーランスに該当するか知りたい」などの相談が事業者などから寄せられているといいます。「全国の労働局でも同法を担当する職員はいると思うが、静岡労働局では相談を受け付けていることを分かりやすく示すために、窓口を開設した。施行日が近付くにつれて、相談が増えてくると予想される」と話しています。

窓口では同法の説明に留まらず、業務を発注する際の発注書や契約書にどのような内容を盛り込めば良いかなど、具体的な相談も可能です。

総務省の令和4年就業構造基本調査によると、同県のフリーランス(実店舗・雇人がいない自営業主または一人社長で収入を得る者)は7.3万人で、全国十指に入ります。

労災認定

天窓踏み抜き墜落死 歩み板設けず

建設業送検 名古屋東労基署

愛知・名古屋東労働基準監督署は、昨年12月に労働者が天窓を踏み抜いて墜落死した労働災害に関連して、太陽光発電設備工事業者と同社の工事責任者を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで、名古屋地検に書類送検しました。屋根上で作業を行わせる際に、体重などの荷重を分散させるための歩み板を設けるなど、踏み抜きを防止するための措置を講じていなかった疑いです。

災害は製造業の工場(愛知県名古屋市)における太陽光発電設備工事現場で発生しました。62歳の労働者が、工場のスレート屋根上で測量作業を行っていたところ、プラスチック素材の天窓を踏み抜き、約4mの高さから墜落し、全身を強く打って死亡しました。

同労基署は、「天窓だけでなく、踏み抜き事故が生じやすいスレート部分にも幅30cm以上の歩み板などの踏み抜き防止措置が必要だったが、講じていなかった」と話しています。

監督指導動向

災害発生事業場 2割が機械停止怠り作業 香川労働局

香川労働局は、労働災害発生事業場に対する監督指導結果を初めて公表しました。

最も多くみられた違反は「掃除等の場合の運転停止等」でした。これは労働安全衛生規則第107条で規定しているもので、事業者に対し、機械の掃除や調整作業を行う場合に、労働者に危険を及ぼす恐れがあるとき、機械の運転停止を求めています。日常的に反復・継続して行われることが少ないため、多くの場合、非定常作業に該当します。

昨年度に監督指導を実施した181事業場中、約2割の43事業場で違反が確認され、そのうち、製造業が36事業場と8割を占めていたことから、同労働局監督課は「機械を停止しないままの掃除や点検は、死亡や重大な災害につながりかねない。製造業には、第14次労働災害防止計画でも重点的な取組み事項に挙げているとおり、普段の作業だけでなく非定常作業時の作業手順書を作成するよう、監督時や集団指導の場で呼び掛けていく」との方針を示しました。

調査

過半数代表者 不適切な選出方法が5割超 連合調査

連合は、働き方改革の定着状況を把握するため、被雇用者1000人を対象にアンケート調査を行いました。36協定の締結当事者が誰か尋ねたところ、過半数労働組合は45.1%、過半数代表者が24.2%でした。過半数代表者の選出方法については、「会社からの指名」27.1%、「一定の役職者が自動的に就任」14.0%、「親睦会などの代表が自動的に就任」10.3%などの不適切な方法が、合計で5割を超えています。

表 

年次有給休暇の年5日取得が義務化されていることについて、

休み方にどのような変化があったか (%)

また、年次有給休暇の5日取得の義務化を受け、休み方の変化を尋ねたところ、12.2%が「その分夏季や年末年始の特別休暇が減らされた」と答えています。

 

実務に役立つQ&A

教育訓練で休暇導入!? 雇用保険給付が創設に

在職中に教育訓練のために休暇を取得した場合、雇用保険から給付が出るようになると聞きました。当社ではこうした休暇制度は設けていません。休暇制度の整備を検討すべきなのでしょうか。

雇用保険の一般被保険者が、教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に給付金が支給されることになり(改正雇保法60条の3)、令和7年10月から施行されます。期間は、訓練を開始した日から起算して原則1年間で、1日当たり支給されるのは基本手当の日額に相当する額です。

雇保法は休暇を取得した場合の給付について規定しています。休暇に関しては、職業能力開発促進法に規定が設けられています。事業主は、必要に応じ、援助を行うこと等により労働者の自発的な職業能力の開発、向上を促進することとしています(法10条の4)。1項1号では、長期教育訓練休暇の付与を挙げていて、2号で始業終業時刻の変更や勤務時間の短縮なども選択肢となっています。

厚労省の雇用保険部会報告(令6・1・10)では、休暇制度について、給付金制度の創設に併せて、教育訓練休暇制度の周知や企業への導入支援など、普及促進に取り組むべきとしています。

身近な労働法の解説 ―間接差別の禁止―

男女雇用機会均等法7条では、募集・採用、配置・昇進などにおいて間接差別を禁止しています。

1.間接差別とは

  • 性別以外の事由を要件とする措置であって、
  • 他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、
  • 合理的な理由がないときに講ずること

をいいます。

 

2.合理的な理由がない場合間接差別として禁止される3つの措置(厚生労働省令)

【措置①】労働者の募集または採用に当たって、労働者の身長、体重または体力を要件とするもの

(身長・体重・体力要件を選考基準としていると認められる例)

・募集または採用に当たって、身長・体重・体力要件を満たしている者のみを対象とすること。

・複数ある採用の基準の中に、身長・体重・体力要件が含まれていること。

(合理的な理由がない場合として考えられる例)

・荷物を運搬する業務を内容とする職務について、当該業務を行うために必要な筋力より強い筋力があることを要件とする場合

・単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的としていない警備員の職務について、身長または体重が一定以上であることを要件とする場合

【措置②】労働者の募集もしくは採用、昇進または職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

(転勤要件を選考基準としていると認められる例)

・募集もしくは採用、昇進または職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすることまたは複数ある採用または昇進の基準の中に、転勤要件が含まれていること

(合理的な理由がない場合として考えられる例)

・広域にわたり展開する支店、支社等がなく、かつ、支店、支社等を広域にわたり展開する計画等もない場合

・広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、長期間にわたり、家庭の事情その他の特別な事情により本人が転勤を希望した場合を除き、転居を伴う転勤の実態がほとんどない場合

【措置③】労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること

(転勤経験要件を選考基準としていると認められる例)

・一定の役職への昇進に当たって、転勤の経験がある者のみを対象とすること。

・複数ある昇進の基準の中に、転勤経験要件が含まれていること。

(合理的な理由がない場合として考えられる例)

・特定の支店の管理職としての職務を遂行する上で、異なる支店での経験が特に必要とは認められない場合において、当該支店の管理職に昇進するに際し、異なる支店における勤務経験を要件とする場合。

今月の実務チェックポイント

従業員の家族が海外居住の場合の手続き

前回は海外勤務者の報酬の取扱いについて説明しましたが、従業員の家族が海外居住の場合の手続きについて解説します。

令和2年4月1日以降の被扶養者の認定に当たり、それまでの生計維持要件に加え日本国内に住所を有する(住民票がある)ことが要件として追加されました。

ただし、留学生や海外赴任に同行する家族等の日本国内に生活の基礎があると認められる場合は国内居住要件の例外として被扶養者の認定が可能となっています。この特例のことを海外特例要件としています。

被扶養者として認定されるためには、被扶養者(異動)届または第3号被保険者関係届を事業主経由で提出します。

〇海外特例要件として日本年金機構への届出が必要なケース

・被扶養者が海外特例要件に該当する場合

例:被扶養者となっている妻や子どもが、夫の海外転勤の同行家族として出国した

・海外在住の方が、被扶養者認定と同時に海外特例要件に該当する場合

例:海外勤務している被保険者と現地で結婚した

・海外特例要件に該当している被扶養者が、海外特例要件に非該当となる場合

例:夫の同行家族として出国していた妻や子どもが、夫の国内転勤により帰国した

〇海外居住のまま海外特例要件に該当しなくなったため、届け出が必要なケース

海外特例要件に該当している方が海外居住のまま海外特例要件に該当しない渡航となった場合は、被扶養者でなくなります。

例:労働目的、渡航先への永住等となった

 

令和6年3月以降の被扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)の日本年金機構の処理について

第3号被保険者が、国外転出後2カ月を経過しても海外特例要件該当届または海外特例要件喪失届の提出がない場合は、日本年金機構から勧奨状が送付されます。

更に2カ月を経過しても届出がない場合は、職権により第3号被保険者の特例要件の喪失手続きが行われます。

全国健康保険協会以外(健康保険組合・共済組合等)の第3号被保険者については、勧奨状は送付されず、日本年金機構が国外転出入の情報を受けた月の翌々月に職権により特例要件は喪失されます。

海外への転出、海外からの転入により市区町村で住民票の転出入の登録をすると、日本年金機構との連携により転出入情報が更新されます。

被保険者の区分 対象者
国民年金第1号被保険者 日本国内に住む20歳以上60歳未満の人
国民年金第2号被保険者

(厚生年金等の被保険者)

70歳未満の会社員、国・地方公共団体の公務員や私立学校の教職員(厚生年金等の被保険者となると同時に、国民年金の第2号被保険者として扱われます)
国民年金第3号被保険者 厚生年金等の被保険者(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(夫または妻)

助成金情報

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

少子高齢化の急速な進行により、労働力人口の減少が見込まれる中で、高年齢者が社会の支え手として活躍していくことが重要です。

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)は、労働協約または就業規則による、原則として65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上までの継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した事業主に対して助成します。

 

概要

以下のいずれかを実施した事業主に対して助成します。

1.65歳以上への定年引上げ

2.定年の定めの廃止

3.希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入

4.他社による継続雇用制度の導入

※旧定年年齢および継続雇用年齢ならびに他の事業主による継続雇用年齢が70歳未満のものに 限ります。

主な支給要件

 

・制度を規定した際に経費を要した事業主であること。

・制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること。

以上のほか、高年齢者雇用等推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であること等が必要

 

申請受付期間

 

1から4の措置の実施日が属する月の翌月から起算して4カ月以内の各月月初から15日(15日が行政機関の休日(土曜日、日曜日、国民の祝日に当たる場合は翌開庁日))まで

 

※ 制度の詳細は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構HP等をご参照ください。

今月の業務スケジュール

労務・経理 慣例・ 行事
  • 8月分の社会保険料の納付
  • 8月分の源泉徴収所得税額・特別徴収住民税額の納付
  • 固定資産税(都市計画税)(第2期分)の納付
  • 防災訓練
  • 健康増進普及月間

●障害者雇用支援月間

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