月刊人事労務だより~2021年6月号~

目次

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○ 最新・行政の動き

厚労省は、令和3年度の「地方労働行政運営方針」をとりまとめました。メーンに据えられたのは、新型コロナウイルスの影響を踏まえた労務管理指導です。

感染症の影響による大量整理解雇の増加を想定し、きめ細かな情報収集と関係部局間での情報共有を進める一方、法違反が認められた場合には、是正の必要性を分かりやすく説明し、自主的な改善を促す方針です。

特に中小事業場に対しては、労働時間・人材確保の状況など経営事情を聴取し、丁寧な対応を講じますが、重大・悪質な事案には厳正に対処するとしています。

中小企業に対するパワハラ防止義務規定の適用(令和4年4月)も近づくなか、感染症を理由とするいじめやカスタマーハラスメント等への対応も重要な課題となります。

 

○ ニュース

「無期転換ルール」見直しへ 不当な抑制策の規制検討

無期転換ルールは、平成24年改正労契法で創設されました。その際、附則により「施行後8年を経過した場合」、見直しの要否を検討する旨定められていました。

これを受け、厚労省では、検討会を設け、改正に向けた議論を開始しました。労契法18条では、有期労働契約期間が通算5年を超えると、労働者に無期転換申込権が生じるとしています。

しかし、通算期間が法定条件を満たしても、権利の行使をためらう(あるいは、よく理解していない)労働者も少なくありません。

一方、企業側についても、契約の回数・期間に制限を設けたり、クーリング期間を挟み込んだりする等により、転換申込みの抑制対策を講じるケースが散見されます。

検討会では、無期転換をバックアップするため、阻害要因の洗い出しや、対策の検討を進めます。併せて、「多様な正社員制度」をめぐるトラブル防止策等についても、提言を行う予定です。

試用期間中の解雇は有効 同僚へ暴行・暴言繰返す

有料老人ホームで働いていた従業員が試用期間途中の解雇無効を訴えた事件で、東京地方裁判所は処分を有効と認める判決を下しました。

訴えを起こした従業員は、契約社員として入社した後、正社員に登用されました。同ホームでは、正社員の試用期間を6カ月と定め、不適格と認めた場合は期間途中の解雇もあり得るとしていました。

事件は朝のあいさつがキッカケでした。同僚にあいさつを返さなかった件を注意された際、相手の胸ぐらをつかみ、「お前、やんのか」と暴言を吐き、その後も言い争いを続けたものです。

事情聴取の際には「過去にバイクで事故を起こし、その後遺症で記憶がなくなることがある」などと弁明しましたが、本人はバイク免許を有せず、弁明は虚偽と判明しました。

裁判所は、試用期間内に「採用前には知ることができなかった不適格性が判明した」として、留保解約権の行使は正当と判断しました。

賞与の変動枠を6割に 70歳までの就労確保

ダイキン工業㈱は、再雇用制度を拡充し、希望者全員を70歳まで継続雇用する制度を整備しました。これに合わせ、賃金制度も仕事内容を評価する仕組みに転換しています。

公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられていることを踏まえ、65歳未満と65歳以上に分けて、制度設計がなされています。標準年収としては、従来制度の水準を維持しつつ、賞与に重点を置いて成果配分する点が特色です。

目標に対する成果をA・B・C・標準の4段階で相対評価し、Aでは1.6倍、Bでは1.3倍相当の賞与額を支給します。

2018年から労使間で協議している65歳への定年延長については、今後も検討を続ける方針です。

地方創生へテレワーク推進 厚労省はガイドライン整備

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新型コロナウイルスの拡大により、テレワークを経験する従業員が増えるとともに、地方移住やワークライフバランスの充実への関心が高まっています。政府は、この機をとらえ、「地方創生テレワーク」を推進する方針を打ち出しています。

内閣官房に設置した検討会議では、昨年12月から議論を重ねていましたが、このほど、提言をとりまとめました。新たな働き方として、首都圏等に立地する企業に勤務したまま、地方に移住して仕事をするスタイルの普及定着を図ります。

今後の取組として、企業に対しては、生産性の向上、災害時の事業継続、人材確保、事業拡張・新規ビジネスに取り組む環境整備などに関する情報を積極的に発信していきます。

一方、厚生労働省は、労使双方のプラスとなるように働き方改革推進にも配慮した「テレワークガイドライン」を公表しました。

従来の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」をベースとしながら、対象者の選定や評価制度の整備など、人事労務管理全般をカバーする内容に拡充されています。

拡大続く「営業秘密持出し」 警察庁の検挙件数

警察庁の統計によると、営業秘密の不正持出しの件数は、昨年1年間で22事件38人に上り、過去最高を更新しました。

検挙事件数は、平成26年が11件、27年が12件、28~30年が18件、令和元年が21件と、増加傾向が続いています。

昨年発生した事案では、人材ビジネス会社で派遣労働者の情報ファイルを複製し、営業秘密を不正に取得したとして、3人の元従業員が逮捕されています。

営業秘密の漏えいは不正競争防止法の規制対象ですが、平成27年の法改正で罰則等が強化され、違反者(個人)には10年以下の懲役または2000万円以下の罰金が科されます。

 

○ 監督指導動向

京・立川労基署は、食料品製造業を対象に実施した安全衛生自主点検の結果を公表しました。

回答した管内80事業場のうち1割強の10事業場で、食料品加工機械の回転部・可動部に安全カバーを設置していませんでした。墜落・転落防止では、20事業場で脚立使用等の際の安全な作業方法を定めていませんでした。

同署では、自主点検の結果を踏まえ、「切れ・こすれなど重篤な災害を発生させるおそれのある機械の安全化や、死亡災害につながる墜落・転落災害の防止対策を、今後も推進する必要がある」と総括しています。

 

○ 送検

退職月の賃金を支払わず 外国人の監理団体を送検 大阪南労基署

大阪南労基署は、退職する労働者に対して、最終月の賃金を支払わなかったとして、外国人技能実習生の監理団体と代表理事を大阪地検に書類送検しました。

監理団体は、ベトナム人技能実習生への通訳や日本語教育を任せるため、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を有する外国人労働者を雇用していました。

同労基署では、過去に勤務していた4人の元通訳等が賃金不払について刑事告訴したことを受け、捜査を続けていました。監督官の話では、「以前から日本人労働者を含め、退職月の賃金を支払わない違反を繰り返していため、是正指導を行っていた」ということです。

法務省と厚生労働省は、同団体に対し、認定計画に従って入国後講習をしていなかった等の理由で、監理団体としての許可も取り消しています。

 

○ 実務に役立つQ&A

退職日に出勤不可か 出産手当金の継続給付


産前休業に入ってから退職予定の従業員がいます。「退職当日に、会社呼出しに応じて出社すると、資格喪失後の出産手当金を受給できなくなる」というウワサを聞きますが、本当なのでしょうか。


退職して健康保険の被保険者資格を喪失しても、一定の条件を満たす場合には出産手当金や出産育児一時金、傷病手当金、埋葬料(費)を受給できます(健保法104条等)。

 

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出産手当金を退職後も継続して受給するには、①引続き1年以上の被保険者期間がある者が、②退職時に出産手当金を現に受けているまたは受けることができる状態であることが必要です。

出産手当金は、被保険者が出産したときに、出産の日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までの間において「労務に服さなかった期間」支給されます。

退職後の継続給付の②の要件を満たすには、退職日の時点で「労務に服さない」状態であることが必要です(協会けんぽ)。退職の当日に出社するとしても、保険証の返還等、事務手続きのみで済ませるべきでしょう。

 

○ 調査

厚生労働省「労働者派遣事業の令和2年6月1日現在の状況(速報)」

派遣元事業主は、厚生労働大臣に対し、毎年6月1日現在の運営状況を報告する義務を負っています(都道府県労働局経由)。

直近の平成2年の集計(速報)をみると、派遣労働者の総数は156万5799人で、前年比0.2%減という状況です。

派遣労働者の受入れについては、個人単位と事業所単位で期間制限が課されています(どちらも3年)。しかし、無期雇用契約を結んでいる派遣労働者は、期間制限の対象外となっています。

このため、有期から無期への転換が進んでいますが、令和2年は、前年に比べ、有期が6万3767人減ったのに対し、無期が6万58人増えています。有期の減少分と無期の増加分が、おおむね釣り合う形となりました。

 

派遣労働者の実人数

派遣労働者の実人数

派遣全体で、有期・無期それぞれの増減率をみると、無期の10.9%プラスに対し、有期の6.3%マイナスという状況です。

一方、製造派遣に限ると、無期の19.1%プラスに対し、有期の14.4%マイナスとなっています。有期雇用者が無期雇用者に代替される速度は、製造派遣の方が速い(およそ2倍)ということです。

派遣労働者の多い製造ラインでも、そのうち、「何年たっても、顔ぶれに変化がない」という時代が到来するのでしょうか。

製造業務に従事した派遣労働者数

製造業務に従事した派遣労働者数

 

○ 職場でありがちなトラブル事例

職務転換を拒んだら解雇 軽易業務で賃金ダウン

メーカーの現場で働くAさんが職務転換の通知を受けたのは、心臓の手術で入院中のことでした。これまで働いていた部署が廃止され、全員が別の部署に異動になるという話です。

勤続30年の会社を去りたくないため、Aさんは、やむなく転換に応じる旨、社長に回答しました。しかし、その後、よくよく説明を聞くと、賃金が大幅に低下するといいます。

専務に問い合わせたところ、「そのとおり。条件が不満なら辞めてもらうほかない」という返事で、話し合いにもなりません。

退職を迫るに等しい態度なので、思いあぐねたAさんは、紛争調整委員会にあっせんの申請を行いました。

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従業員の言い分
会社の経営悪化に伴い、職務転換を実施するという話は、半年前から聞いていました。しかし、賃金の引下げとセットとなる内容で、不満な者には解雇をちらつかせるという会社の態度には納得がいきません。
復職は求めませんが、内実としては会社都合の退職なので、経済的・精神的被害に対する補償金として300万円の支払いを求めます。

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事業主の言い分
Aさん一人をターゲットとしたわけでなく、部署の全員に同じ内容の提案を行ったものです。新しい職務は軽易・簡単な作業内容で、賃金の維持は、到底、ムリな注文です。
退職金は全額支払いましたが、やっとの思いで銀行の不渡りを回避している状況で、会社として要求にあるような金額をねん出する余力はありません。

【 あっせんの内容 】 会社側に対し、「退職か、賃金ダウンを伴う異動か、二者択一の選択を強要する」行為は実質的な解雇とみなされる可能性が高く、裁判になれば、解雇無効という結果になるおそれがあると説明しました。
そのうえで、会社財政の許す範囲内で、金銭的解決を図れないかと打診しました。

【 結果 】 会社がAさんへ、80万円を4カ月分割で支払うという条件で、支払日・方法等を含めた合意文書を作成し、労使双方が合意しました。

 

○ 身近な労働法の解説―専門業務型裁量労働制①―

今回から3回にわたり、労基法に定める「専門業務型裁量労働制」について解説します。

  1. 専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)とは
  2. 専門業務型裁量労働制の対象業務

1.専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)とは

業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令および大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
どのような業務にもある程度の裁量は与えられますが、専門業務型裁量労働制においては、対象業務が19業務に限定されています。

2.専門業務型裁量労働制の対象業務

対象の19業務については、細かく規定され、限定されています。今回は、19業務のうち、3業務について記載します。そのほかの業務は、次回以降記述します。

① 新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務

  • 「新商品もしくは新技術の研究開発」とは、材料、製品、生産・製造工程等の開発または技術的改善等をいうものであること。

② 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。⑦(次回掲載)において同じ)の分析または設計の業務

  • 「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。
  • 「情報処理システムの分析または設計の業務」とは、(i)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定およびその方法に適合する機種の選定、(ⅱ)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(ⅲ)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計または作成を行うプログラマーは含まれないものであること。

③ 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送法に規定する一定の放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務

  • 「新聞または出版の事業」には、新聞、定期刊行物にニュースを提供するニュース供給業も含まれるものであること。なお、新聞または出版の事業以外の事業で記事の取材または編集の業務に従事する者、例えば社内報の編集者等は含まれないものであること。
  • 「取材または編集の業務」とは、記事の内容に関する企画および立案、記事の取材、原稿の作成、割付け・レイアウト・内容のチェック等の業務をいうものであること。記事の取材に当たって、記者に同行するカメラマンの業務や、単なる校正の業務は含まれないものであること。
  • 「放送番組の制作のための取材の業務」とは、報道番組、ドキュメンタリー等の制作のために行われる取材、インタビュー等の業務をいうものであること。取材に同行するカメラマンや技術スタッフは含まれないものであること。
  • 「編集の業務」とは、上記の取材を要する番組における取材対象の選定等の企画および取材によって得られたものを番組に構成するための内容的な編集をいうものであり、音量調整、フィルムの作成等技術的編集は含まれないものであること。

 

○ 助成金情報

産業雇用安定助成金

 

○ 今月の実務チェックポイント

育児休業給付金について

今回は雇用保険の被保険者が、その一定の年齢に満たない子を養育するために休業した場合に支給される育児休業給付金について説明します。

育児休業給付金とは

育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者の育児休業期間中の生活保障です。ここでいう雇用保険の被保険者とは、一般被保険者または高年齢被保険者に限ります。この雇用保険の被保険者が、その1歳に満たない子(パパ・ママ育休プラスの場合は1歳2カ月。保育所等における保育の実施が行われないなどの場合は1歳6カ月あるいは2歳)を養育するために育児休業を取得したときに男女を問わず育児休業給付金が支給されます。ただし、この育児休業を取得する雇用保険の被保険者については、育児休業開始日前2年間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある完全月(※)が12カ月以上あることが要件となりますが、過去2年間に疾病・負傷などの理由により30日以上にわたって賃金の支払いを受けることができなかった日数がある場合は、この日数を2年間に加えてよいことになっています(最長で4年間)。
※育児休業開始日が令和2年8月1日以降であって、育児休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12カ月ない場合は、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1カ月として取扱う。

 

育児休業給付金の支給額

育児休業を開始した日から起算する1カ月ごとの期間を支給単位期間といい、育児休業給付金は、支給単位期間ごとに計算されて支給されることになります(育児休業終了日を含む支給単位期間について、1カ月に満たないことがある場合、暦の日数になります)。支給額は原則として次のようになります。

1.2以外の支給単位期間
休業開始時賃金日額×30日×67%(ただし、育児休業の開始から起算して休業日数が通算して181日目から50%)
2.育児休業終了日を含む支給単位期間
休業開始時賃金日額×暦日数×67%(ただし、育児休業の開始から起算して休業日数が通算して181日目から50%)

※1 休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前(産前産後休業を取得した被保険者については産前産後休業開始前)6カ月間の賃金を180で除して得た金額です。
※2 支給単位期間に賃金の支払いがある場合は、支給額の減額や支給されないことがあります。

育児休業給付金の注意点

  1. 育児休業を開始する時点で、育児休業終了後に離職することが予定されている場合は、育児休業給付金は支給されません。
  2. 育児休業を開始する雇用保険の被保険者が有期契約労働者(期間を定めて雇用される労働者)である場合は、上記で説明したことに加えて、育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続しており、かつ、子が1歳6カ月までの間(ただし、保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により子が1歳6カ月に達した後の期間について育児休業を取得する場合は、子が1歳6カ月に達した後の休業開始時において2歳までの間と読み替えて適用)に労働契約(労働契約の更新が約束されている場合は、更新後の労働契約)の期間が満了することが明らかでないことが必要です。
  3. 支給単位期間の途中で離職した場合は、その支給単位期間については育児休業給付金が支給されません。
  4. 育児休業の期間中に他の子に係る産前産後休業や育児休業が開始した場合、あるいは対象家族に係る介護休業が開始した場合は、新たな休業の開始日の前日をもって育児休業給付は終了となります。

○ 今月の業務スケジュール

労務・経理

  • 5月分の社会保険料の納付
  • 5月分の源泉徴収所得税額・特別徴収住民税額の納付
  • 固定資産税(都市計画税)(第1期分)の納付
  • 労働保険の年度更新 申告・納付(6月1日から7月12日)

慣例・行事

  • 男女雇用機会均等月間
  • 男女共同参画週間
  • 外国人労働者問題啓発月間

 

 

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