最新・行政の動き
賃上げや非正規支援に重点
助成金パッケージを周知 厚労省運営方針
厚生労働省は令和8年度地方労働行政運営方針を策定しました。賃金引上げに向けた支援や非正規雇用労働者への支援を重点対策に位置付け、「賃上げ」支援助成金パッケージの周知や、同一労働同一賃金の遵守徹底を図るとしました。賃上げに取り組む目的・方法に応じ、個々の企業がニーズに合った助成金を活用できるよう丁寧な情報提供を実施します。
同パッケージのうち、労働時間削減などに向けた環境整備として労働能率向上に役立つ設備・機器の導入などを行い、成果を上げた場合に経費の一部を助成する働き方改革推進支援助成金では、小規模企業への支援を強化しました。賃上げ結果に応じて設定されている助成上限額の加算措置について、1~9人規模企業が賃金を5%以上引き上げた場合の加算幅を拡大しています。
人材確保等支援助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースでも、5%以上の賃上げを要件とする加算措置に、「7%以上」などの区分を新設しました。同コースは、賃金規程・諸手当や人事評価などの雇用管理制度を整備したり作業負担を軽減する機器を導入したりして離職率を低下させた企業が対象です。雇用環境を整備し賃金を7%以上引き上げた場合に助成額を50%加算する措置や雇用管理に困難を抱える事業所が3%以上引き上げた場合に25%加算する措置を新設しています。
非正規労働者の処遇改善にも重点的に取り組むとしました。同一労働同一賃金の遵守徹底に向け、労基署の定期監督で事実確認を行ったうえ、労働局の雇用環境・均等部(室)や職業安定部が効率的に報告徴収・指導監督を実施します。労基署による集団指導の場も活用し、不合理な待遇差の解消に向けた取組みを要請していきます。基本給・賞与で待遇差が生じている理由を説明できていない企業には点検実施を要請し、自主的な取組みを促します。
ニュース
意思決定の補助役に HR部門でのAI活用 経団連報告
経団連は、企業のHR部門でのAI活用に関する報告書を公表し、活用に当たっての基本的な考え方や企業に求められる対応を提言しました。採用や人材配置、労務管理などの分野で活用する際は、人間の意思決定のサポート機能として位置付けることが重要と訴えています。
活用への手順としては、①AIに行わせる内容の決定とAIへの必要なデータの入力、②AIによる担当者のサポートや検討結果の出力、③AIの判定理由を把握し、人間が責任を持って最終的に意思決定――の3つの段階を示しました。たとえば採用の場面では、まずは客観的・具体的で明確な評価基準をAIに入力し、その後、AIが面接内容のレポートや評価基準のレコメンドを作成し、最終的に人間が候補者の合否を決定します。
HR部門は労働者のキャリアや処遇に大きな影響を与える部門であるため、AI活用においては、安全性、公平性、透明性の確保が求められるとしました。具体的には、採用、評価、配置など、及ぼす影響が大きい場面では、AIの結果のみで不利益な処遇を決定しないなどの対応を想定しています。
戦略的推進体制の構築も重要と指摘しました。AIの推進責任者の設置や担い手の確保、社員の不安や懸念を取り除くために十分な説明を通じて現場の理解を得るなど、現場に根付かせるための運用、定着の仕組みづくりも欠かせないとしました。
夏季賞与予測 5年連続増に 民間シンクタンク
民間シンクタンクによる夏季賞与の予測が発表されました。前年比2.3~2.5%増の43.6~43.7万円で、5年連続で2%台の増加が見込まれるとしています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、前年比2.3%増の43.6万円と予測しました。企業の好業績と労働需給のひっ迫が追い風になると分析しています。支給労働者数は3.3%増の4521万人、支給総額は5.7%増の19.7兆円としました。
第一ライフ資産運用経済研究所は前年比2.5%増の43.7万円を見込みました。自動車関連の業績は下振れがめだつものの、そのほかの業種、とくに非製造業では価格転嫁の進展もあり業績は底堅いとしています。
帯同家族も対象に 日本語学習の補助金拡充
山梨県・外国人定着支援
山梨県は、県内中小企業の外国人労働者の受入れ・定着を促進するため、企業に対して交付してきた日本語能力向上に関する補助金を拡充しました。従来は外国人労働者の日本語学習に要した経費のみを対象としていましたが、今年度からは帯同家族も補助対象に加えました。
同県が昨年実施した調査では、外国人を雇用するなかで感じた日本語教育に関する課題を複数回答で尋ねたところ、「自主学習に任せている」と回答した企業が最も多く、39.4%に上りました。「本人の学習意欲が低い」との指摘も16.8%みられ、「教育機会の不足と本人側の要因が複合的な課題を形成している」と分析しています。
今年度は、帯同家族の日本語学習も支援することで、外国人労働者が安心して働くことができる環境の整備を進める企業を後押しします。具体的には、企業が外国人労働者や帯同家族を対象として日本語教室やオンラインレッスンの受講費用を負担した場合、補助率2分の1で、20万円まで補助します。
対象となる外国人労働者は、令和7年4月以降に雇用した者です。日本語能力試験(JLPT)など、日本語能力を測る試験を受験することを必須としました。帯同家族については受験を求めていません。
深夜割増率45%に 駅係員・運転士確保へ 小田急電鉄
小田急電鉄㈱は、宿泊勤務に対応できる駅係員や運転士を確保するため、深夜(22時~翌5時)の割増賃金率を30%から45%へ引き上げました。夜間の設備保守を行う作業員など屋外勤務の場合は36%から51%までアップします。
駅係員や運転士は、終電後に始発までの帰宅手段がなくなるため、同社では朝9時~翌朝9時までの宿泊勤務を含む一昼夜交替制を採用しています。近年は子の保育園への送迎などを理由に対応できない者が男女を問わず増えていました。日勤のみにするなどの措置を一部採らざるを得ませんが、鉄道事業の運営には、宿泊勤務に対応可能な人材が一定数欠かせません。人材確保のため、今年度は別途、平均1.21万円程度のベースアップも実施しました。鉄道係員の25歳モデル賃金は、年収ベースで前年比31万円(6.6%)以上増加しました。30歳以下の若手社員が入居できる独身寮についても、本人負担費用月1.1万円を入社4年目まで無料とするなど、福利厚生面の充実を図っています。
育児との両立支援策としては、小学6年生までの子の行事参加などを理由に、年10日まで無給で取得できる休暇制度を新設しました。
送検
リスクアセス 実施状況を管理させず
全国初の書類送検 北大阪労基署
北大阪労働基準監督署は、化学物質管理者にリスクアセスメントの実施状況を管理させていなかったとして、塗装業者と同社取締役を労働安全衛生法第22条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで大阪地検に書類送検しました。同社工場内でシンナーが引火爆発し、3人が死傷する労働災害が発生しました。シンナーを散布した労働者も送検しました。
労災は令和6年12月28日に同社工場の乾燥炉で発生しました。乾燥炉は直前まで内部温度を200度に設定して運転していました。労働者が清掃のために、ドアの外から温度が下がりきっていない炉内へシンナーを撒いたところ、引火し爆発が発生しました。労働者2人が死亡、1人が重傷を負いました。シンナーは塗装作業用に常備していたもので、散布は労働者の独断でした。
労働安全衛生規則第12条の5では、事業者は化学物質管理者にリスクアセスの実施状況を管理させなければならないと定められていますが、同社はこれを怠った疑いが持たれています。
リスクアセス実施状況の管理義務違反による送検は全国初となります。リスクアセスの実施は同法 第57条の3で事業者の義務と定められていますが、行政指導の対象となるのみで罰則はありません。同労基署は2人が死亡した事態を重くみて、罰則のある同法第22条違反の疑いによる立件に踏み切りました。
爆発防止措置を守らなかったとして、シンナーを散布した労働者も同法第26条(労働者の遵守義務)違反の疑いで送検しました。同法は引火性物質をみだりに加熱、または蒸発させてはならないと定めています。
監督指導動向
「あ・つ・い」を合言葉に熱中症対策を――埼玉労働局は4月23日、熱中症対策セミナーを開催しました。川又裕子健康安全課長が、同労働局が独自に策定した職場における熱中症対策の合言葉「あ・つ・い」を紹介しました。それぞれ「あ=暑さ指数(WBGT)の把握と軽減」、「つ=疲れをためない(こまめな休憩)」、「い=異変があればすぐ報告」の頭文字を取ったものです。
川又課長は、「『暑い』と聞いたらこの合言葉を思い出してほしい」とコメントしました。同労働局管内での熱中症による死亡労働災害は令和5~7年の3年連続で0件だったとして、「重篤化させない取組み」の継続も訴えました。
調査
人間ドックの需要高い 福利厚生に関する労働者調査 JILPT
福利厚生制度・施策として、「ある」とする割合は「慶弔見舞金制度」が42.1%で最高となりました。次いで「人間ドック受診の補助」が35.2%、「永年勤続表彰」が32.9%、「家賃補助や住宅手当の支給」が25.4%となりました。
実際の利用の有無に関係なく、必要だと思う福利厚生制度・施策を複数回答で尋ねました。「人間ドック受診の補助」の割合が最も高く、38.8%に上りました。次いで「慶弔見舞金制度」が33.8%、「家賃補助や住宅手当の支給」が32.6%、「食事手当」が31.8%、「永年勤続表彰」が30.4%となっています。

正規雇用社員に限ってみると、「人間ドック受診の補助」と「家賃補助や住宅手当の支給」がそれぞれ38.8%で最も高くなりました。正規雇用社員以外では、高い順に「人間ドック受診の補助」(38.8%)、「慶弔見舞金制度」(31.5%)となりました。
実務に役立つQ&A
3年上限で失業給付は 雇用契約当初から設定
業務の受注の見通しから、新たに採用する有期雇用の従業員の更新上限を3年に設定します。期間満了で雇止めして離職したときの失業給付は、特定理由離職者の扱いになるのでしょうか。
有期雇用契約が更新されず、雇用期間3年未満で離職した場合には、一般の受給資格者のほか、特定理由離職者、特定受給資格者のいずれにも当たる可能性があります。
事業主から最後の契約更新とすることの申入れがあったときには、特定理由離職者となることがあります。ただし、契約当初から契約更新の上限を設けている場合にはこれと異なる取扱いがなされます。
当初の契約締結時から更新上限が設けられている場合に関しては、ここでいう上限の追加に含まれないと解されています(雇用保険業務取扱要領)。離職理由は「一般」の区分になる可能性があります(大阪労働局「雇用保険の事務手続きの手引き」)。
身近な労働法の解説 ―治療と就業の両立支援指針―
改正労働施策総合推進法により、令和8年4月1日から、職場における治療と就業の両立支援の取組が、事業主の努力義務になりました。事業主は、「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)に基づき、職場において必要な措置を講じることが望まれます。
1.治療と就業の両立支援の対象
がん等の病気を抱える労働者の中には、職場の理解や支援体制が十分でなく、就業をあきらめてしまうケースが少なくありません。事業主には、病気になっても、治療を受けながら安心して働き続けられるよう支援するため、労働者からの相談に応じ、適切に対応できる体制・環境を整備し、必要な就業上の調整や配慮を行うことが求められます。
指針の対象は、雇用形態にかかわらず全ての労働者です。対象疾病は、国際疾病分類に掲げられている疾病であって、医師の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と判断され、かつ、就業の継続に配慮が必要なものです。
2.両立支援を行うための環境整備
【事業主の方針表明】トップとして両立支援に取り組む基本方針を表明し、社内に周知することで、両立支援に向けた職場風土を醸成します。
【研修等を通じた意識啓発】全ての労働者、管理職に対して、研修等を通じて意識啓発を行いましょう。
【相談窓口の明確化・社内の支援体制の整備】労働者が安心して相談や支援の申出を行うことができるように、相談窓口や申出が行われた場合の情報の取扱い等を明確にします。
関係者(事業主、人事労務担当者、産業保健スタッフ、上司・同僚等)の役割や対応手順をあらかじめ整理しておくことが望まれます。
【社内制度(休暇制度・勤務制度)の整備】治療と就業の両立支援においては、短時間の治療が定期的に繰り返される場合、就業時間に一定の制限が必要な場合、通勤による負担軽減のために出勤時間をずらす必要がある場合等があることから、以下のような休暇制度、勤務制度を各事業場の実情に応じて導入し、治療のための配慮を行うことが望まれます。
・休暇制度(時間単位の年次有給休暇、傷病休暇、病気休暇 等)
・勤務制度(時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度、試し出勤制度 等)
3.両立支援を行うに当たっての留意事項
治療と就業の両立支援は、私傷病である疾病にかかわるものであることから、労働者本人からの支援を求める申出を端緒として取り組むことが基本となります。
労働者に対する措置等の検討に当たり、事業主が一方的に判断しないよう、「就業継続の希望や配慮の要望を聴取し、十分な話合い等を通じて労働者本人の了解を得られるよう努める」「疾病のり患をもって安易に就業を禁止せず、主治医や産業医等の意見を勘案して、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講じて就業の機会を失わせないよう留意する」「疾病及びその治療に対する誤解や偏見等が生じないよう、事業主、人事労務担当者、上司・同僚等の関係者において必要な配慮を行う」といった取組みが必要です。
両立支援の体制整備・進め方については、厚生労働省「治療しながら働く人を応援する情報ポータルサイト『治療と仕事の両立支援ナビ』」を活用するとよいでしょう。
今月の実務チェックポイント
―労働保険年度更新・社会保険算定基礎届―
重点手続きが重なる季節になりました。手続き別に再確認しましょう。
●労働保険年度更新
令和7年4月~令和8年3月までの労働保険料を確定します。更に令和8年4月~令和9年3月までの概算保険料を算出し、申請・納付する手続きです。
手順
1.月毎に賃金データを集計する
2.雇用保険被保険者を確認する
3.賃金総額を集計し保険料率を確認し保険料を計算する
4.管轄の労働局に提出し保険料を納付する
計算のポイント
通勤手当:含める、賞与:総額に含める、役員報酬:原則含めない(兼務役員は労働者分のみ含める)
※労働保険料の計算は支払日ベースではなく、勤務した月で集計
●社会保険算定基礎届
社会保険料について標準報酬月額を年1回、見直し、9月~翌年8月までの社会保険料を決定します。
手順
1.4月・5月・6月の給与データを集計する
2.支払基礎日数を確認する(17日以上、パート社員は特例あり)
3.報酬の平均額を計算する(標準報酬額)
4.標準報酬額が決定したら等級を確認する
計算のポイント
通勤手当:含める、諸手当:含める
7月1日時点の被保険者が対象、計算期間は支払日ベースです。
除外する人
6月1日以降に資格取得した社員
6月30日以前に退職した社員
7月~9月に月額変更になる社員(月額変更対象者は、算定基礎届ではなく月額変更が優先)
助成金情報
働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース)
自動車運転者については、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、特にトラックドライバーにおいては荷待ち・荷役時間の長期化が長時間労働の大きな要因となっています。
本助成金(取引環境改善コース)は、荷主集団などが、トラックドライバーの時間外労働の削減等のために、荷待ち、荷役時間の短縮に向けた取引環境整備の取組みを実施した場合に助成金を支給します。
【対象・主な要件】
本コースは、単独企業ではなく、荷主・倉庫事業者・運送事業者等からなる「集団」での取組みが前提となります。主な要件は以下のとおりです。
・3者以上で構成された組織であること
・荷主若しくは倉庫事業者及び1以上の運送事業者で構成されていること。
・運送事業者のうち中小企業事業主の割合が1/2超であること
・現に活動している、または今後具体的な活動が見込まれる荷主集団であること
また、代表事業主を定め、計画的に改善事業を実施する必要があります。
【対象となる取組み(改善事業)】
本助成金では、取引環境の改善に資する以下の取組みが対象となります。
・取引適正化への理解促進など、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
・好事例の収集・普及啓発
・セミナーの開催
・巡回指導や相談窓口の設置
・運送事業者等が利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新(例:予約システム、荷役機器等)
【成果目標】
助成を受けるためには、事業実施計画に基づく取組みにより、
・荷待ち時間・荷役時間の短縮
・労働時間の削減
といった成果を上げることが求められます。
【助成額】
助成額は以下のいずれか低い額となります。
・対象経費の合計額
・上限額100万円
設備投資や外部専門家の活用等に要した費用の一部が助成対象となります。
【申請スケジュール】
・交付申請期限:2026年11月30日
・事業実施期限:2027年2月14日まで
・支給申請:事業終了後30日以内等
なお、予算上限に達した場合は早期締切となる可能性があります。
【活用のポイント】
本コースは、社内の努力だけでは解決が難しい「取引慣行」に踏み込んだ点に特徴があります。物流業界を中心に、荷主との関係改善や業務の平準化を図ることで、長時間労働の是正と生産性向上の両立が期待されます。
本助成金は、働き方改革の次の段階として「取引環境の見直し」に焦点を当てた制度です。外部要因に起因する労働時間の課題を抱える企業にとって、有効な活用が期待されます。

* 制度の詳細は厚生労働省HP「働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース)」等をご参照ください。
今月の業務スケジュール
| 労務・経理 | 慣例・ 行事 |
| ●5月分の社会保険料の納付 ●5月分の源泉徴収所得税額・特別徴収住民税額の納付 ●固定資産税(都市計画税)(第1期分)の納付 ●労働保険の年度更新 申告・納付(6月1日から7月10日) |
●男女雇用機会均等月間 ●男女共同参画週間 ●外国人労働者問題啓発月間 ![]() |





