月刊人事労務だより~2022年6月号~

目次

◆最新・行政の動き

厚労省は、今年10月に施行される短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、日本年金機構に事務の取扱い上の留意点を通知しました。

今回の適用拡大では、週の所定労働時間が30時間未満の短時間労働者の社会保険加入について、対象となる企業規模が従来の「常時500人超」から「常時100人超」に拡大されます。

併せて、継続1年以上としていた労働者の雇用期間要件が廃止されます。週の所定労働時間などが正社員の4分の3以上の労働者の場合と同様に、雇用期間が2カ月を超える見込みがあれば加入対象となります。

同通知などでは「常時100人超」について、同一法人事業所における厚生年金保険の被保険者の総数が、1年間のうち6カ月以上100人を超えることが見込まれる場合に該当するとし、70歳以上で健康保険のみ加入している労働者や、今回の適用拡大の対象になる短時間労働者を含めないとしました。

◆ニュース

◆監督指導動向

東京労働局は、男性労働者の育児休業取得を促進するため、今年9月までに社内研修に活用できる動画を作成します。①改正育介法の解説、②労働者向けの育休取得方法、③管理職向け研修、④育休取得に関する法律と金銭、⑤就業規則の規定方法―の5本を予定しており、人事担当者だけでなく、労働者個人も視聴しやすくするため、1本当たり30分程度の長さにまとめ、いつでもみられるようにホームページ上で公開します。

また、同労働局では今年10月以降、改正育介法に関する指導を強化します。指導においては、周知や意向確認について個別に実施しているかどうかをとくに重点的にチェックします。イントラネットに社内マニュアルなどを掲載するだけでは個別とはいえず、法令では対面・オンラインで面談を行うか、書面交付、FAX、電子メール送付のいずれかの方法を採ることが求められます。

指導の際に違反がみられた場合は、社名を伏せたうえで指導内容の公表し、法令遵守の徹底につなげるとしています。

◆送検

最低賃金改定後も時給上げず送検 横浜西労基署

神奈川・横浜西労基署は、労働者15人を最低賃金額未満の時給で働かせたとして、食品製造業者と同社の代表取締役を最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反の疑いで、横浜地検に書類送検しました。令和3年8月分の賃金について、当時の同県の最賃以上の額を支払わなかった疑いです。最も低い者で4年前の最賃と同額の時給983円でした。

同労基署によると、5年前の定期監督で同法違反が発覚。是正指導すると最賃まで引き上げるが、その後最賃の改定があっても時給を上げず、再指導を受けるという状態でした。改善の見込みがないとみて、送検に踏み切っています。

同社には常時25~30人の労働者が在籍しており、そのほとんどが65歳以上の高齢者。ハローワークなどに求人は出さず、近所で働きたい高齢者や、主婦などの主たる生計者でない者を中心に従業員の紹介で人を集めていました。労働者からの相談もこれまでなかったとのことです。

◆実務に役立つQ&A

就業場所間の通災か 家業を終業後手伝う


当社では兼業を許可制にしています。家業(自宅と別の店舗)を手伝いたいという申出がありました。終業後として、移動中の事故は通勤災害といえるのでしょうか。


業の場所から他の就業の場所への移動も、通勤の範囲に含まれています(労災法7条2項2号)。

当該移動の間に起こった災害に関する保険給付は、「終点たる事業場」の保険関係で行う(労災則18条の5第2項、平18・3・31基発0331042号)としています。

終業後にアルバイト先へ向かうようなケースであれば、アルバイト先の保険関係で処理することになります。

家業が同居の親族のみを使用する場合、「労働者」には当たらない可能性があります(労基法116条)。労災保険でも、同様に解されます(労災法コンメンタール)。

◆調査

受注者の価格転嫁進まず 中小企業庁調べ

中小企業庁が約2000社からの回答を集計した取引適正化に関する調査によると、労務費の上昇を取引価格に反映できたとする受注者の認識は28%に留まることが判明しました。一方、発注者は71%が反映できたと回答しており、受注者の認識とは40ポイント以上の差が生じています。

労務費を取引対価に「概ね反映できた」と回答した企業の割合(全体)

調査は、取引適正化に向けて「自主行動計画」を策定している団体を通じて回答を得たもの。12業種46団体が会員企業へ回答を依頼し、2376社の結果を集計しました。

労務費の反映について業種別にみると、流通・小売業では取引価格に反映できたと答えた受注者は0%でした。発注者の79%が反映できたとしたのに比べ、認識に大きな差が出ています。同業種以外で格差が大きかったのは、順に自動車・自動車部品64ポイント(発注者73%、受注者9%)、金属産業59ポイント(発注者84%、受注者25%)、繊維36ポイント(発注者70%、受注者34%)などとなっています。

昨年度調査では、労務費を反映できたと答えた受注者の割合は全体の36%でしたが、今回は一昨年と同水準まで落ち込みました。今後の対策として、中小企業を対象に取引に関する状況調査を行う「下請Gメン」の体制を強化し、実態を業界団体へフィードバックするとしました。

労務費を取引対価に「概ね反映できた」と回答した企業の割合(業種別)

◆身近な労働法の解説 ―使用者の安全配慮義務―

働き方改革の推進や健康経営、SDGsなど、人を大切にする経営が注目されています。
今回は、使用者の安全配慮義務について解説します。

1.法律の定め

労働契約法5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。
労働者は、使用者の指定した場所で、使用者の供給する設備・器具等を用いて労働に従事します。労働契約の内容として具体的に定めていなくても、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき「安全配慮義務」を負っているとされます。

2.条文の解説

    1. 使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として、当然に安全配慮義務を負うことを規定したものです。
    2. 「労働契約に伴い」は、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に、使用者は安全配慮義務を負うことを明らかにしたものです。
    3. 「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれます。
    4. 「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではありませんが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められます。

3.災害の予防責任

使用者は、労働災害を発生させないように事前に予防措置を講じて保護する義務を負います(予防責任)。したがって、労働災害の「危険発見」と「その事前排除(予防)」の活動が必要です。

    1. 危険発見・・・職場における危険、特に働いている人の周りにある危険を予知して発見する。
    2. 事前排除(予防)・・・リスクを除去したり低減させたりし、残存したリスクに対しては作業者にその存在などを示し、危険が顕在化しないように対策をとる。

上記活動には、安全衛生管理体制を整備することが重要です。安全委員会・衛生委員会の設置・ストレスチェックの実施のほか、雇入時・作業内容変更時教育、危険予知・ヒヤリハット活動、労働時間管理、ハラスメント防止、作業環境の整備、労働者の健康管理なども大切です。
なお、令和3年12月1日に「事務所衛生基準規則及び安全衛生規則を一部改正する省令」が公布され、照度、便所、休憩設備、休養室、救急用具等に係る改正が行われました。

テレワークや在宅勤務においても、使用者には、労働安全衛生体制を確立し、労働者の安全と健康を確保するために必要となる具体的な措置を講ずることが求められています(「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

4.その他

労働契約法5条違反には罰則がありません。
しかし、安全配慮義務を怠った場合、民法709条(不法行為責任)、民法715条(使用者責任)、民法415条(債務不履行)等を根拠に、使用者に損害賠償を命じる判例があります。
労働安全衛生法で定める最低基準を遵守することは当然として、使用者には、状況に応じた必要な配慮が求められます。

◆助成金情報

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

◆今月の実務チェックポイント

育児・介護休業法改正の対応について

男女とも仕事と育児を両立できるように、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されることとなりました。今回は、令和4年10月1日から実施される産後パパ育休(出生時育児休業)について解説します。

○産後パパ育休(出生時育児休業)とは

対象期間 取得可能日数 子の出生後8週間以内に 4週間(28日)まで取得可能
申出期限 原則として、休業の2週間前まで
※職場環境の整備等の措置について、次の①~③のすべてを労使協定で定めている場合は1カ月前までとすることが可能
① 次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること。
・雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
・育児休業に関する相談体制の整備
・雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集および当該事例の提供
・雇用する労働者に対する育児休業に関する制度および育児休業の取得の促進に関する方針の周知
・育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分または人員の配置に係る必要な措置
② 育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。
③ 育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと。
分割取得 2回まで分割して取得可能
※産後パパ育休を2回に分割して取得する場合は、出生後8週間のうち、いつ休業し、いつ就業するかについて、初回の産後パパ育休の申出の際にまとめて申し出ることが必要
※まとめて申し出ない場合には、事業主は2回目の申出を拒むことができるとされている
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が個別に合意した範囲で就業することが可能
※労働者が休業中に就業することを希望する場合は、産後パパ育休の開始予定日の前日までに以下を申出
① 就業可能日
② 就業可能日における就業可能な時間帯(所定労働時間内の時間帯に限る)その他の労働条件
※事業主は、就業希望の申出がされたときは、次に掲げる事項を速やかに労働者に提示
① 就業可能日のうち、就業させることを希望する日(就業させることを希望しない場合はその旨)
② ①の就業させることを希望する日に係る時間帯その他の労働条件

※1 雇用された期間が1年未満の労働者、申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定を締結することで、対象外とすることが可能です。
※2 休業中の就業について、事業主の提示に対して、休業開始予定日の前日までに労働者が同意を行った範囲内で就業させることが可能となります。
※3 休業中の就業について、事業主は、労働者の同意を得た場合は、同意を得た旨と、就業させることとした日時その他の労働条件を労働者に通知する必要があります。

◆今月の業務スケジュール

労務・経理

  • 5月分の社会保険料の納付
  • 5月分の源泉徴収所得税額・特別徴収住民税額の納付
  • 固定資産税(都市計画税)(第1期分)の納付
  • 労働保険の年度更新 申告・納付(6月1日から7月11日)

慣例・行事

  • 男女雇用機会均等月間
  • 男女共同参画週間
  • 外国人労働者問題啓発月間

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